第14話
コマンドウインドウにはいかにも、な男性の姿が映っていた。
「わぁい、暑苦しそうだー。女のコはいなかったか…」
「女性になりますとリザイアとなります。力が格段に落ちますのでオススメできません。」
バイパス形成するならやはり美女がいい、と思ってはいるものの、朔サマ級の強さを持っているものはなかなかいない。そもそも力を誇示するものは大抵男性を模している。
「そういえば、属性が同じになると焰姫が拗ねちゃうかもだよなー」
ふと何となしに気付く。多属性を持つのはいいかもしれないが、同属性ばかりでは多様性がない。同属性を極めるより、多属性所持者で居たい。その方が色々融通が効くだろう。
いきあたりばったりに考えているのがよく分かる。『選択』は、時が経てば変わるのだ。
焔神・焼のコマンドウインドウを閉じる。
「直、他に広範囲を焼き払えるような能力知らない?」
「…焼き払う、ではなく蒸発または細胞のプログラミングを変更しネクローシス…つまり壊死を引き起こす能力であれば心当たりがあります」
「そっちの方向でいくか。その情報展開してくれ」
了解しました、という言葉とともに情報がコマンドウインドウに表示される。
雷神・流光
名前:流光
種類:神
役割:ラグ・クラウドの雷を司る一柱。
浄和遊悟とのバイパス「未形成」
先程の焔神と同じように情報が表示される。
能力的に申し分がなさそうなので、コマンドウインドウに情報を入力していく。さっさとしないと時灘が(能力使いっ放し+放置で)グレそうだ。
「流光」「契約」「形成」「召喚」「承認」「確定」
『選択』、「決定」
コマンドウインドウに粗方入力し、『選択』を「決定」させる。
向こう(契約対象)が少しでも自分とバイパス形成に興味をしめすと、此方に一度「召喚」という形で顕現する。
基本的に「ナル」を大量に獲得できるバイパスを持っている自分の召喚には応じるよう『選択』してはいるが、補完機能がどうカミサマを補完しているかはわからないため未知数なところがある。
正面の空間にぼんやりとした光が灯る。と、瞬間閃光の様なものが走り目の前が白飛びし視界が開けた頃には一人の男性が立っていた。
「お前がオレとバイパス形成したいだと?」
「ああ、形成すりゃナルを満足するまで与えてやる。だから…俺に力を使わせろ」
相手の髪をかき分け、額に掌を当てる。バイパス形成用の情報書き換えを行う為だ。情緒もなにもなく強引に進めているのは時灘がグレそうどころかもうすでにグレてるのがわかるから。一応染闇を止めているが、そろそろ止まっている時間が動き出す危険がある。
「っクソ、強引だ、っ!」
額に当てられた手を振りほどけずに、流光が呻く。書き換えと同時にバイパスが形成され始めナルが供給されると、そのナルの量に圧倒され立っていられなくなったのか膝を折った。
「書き換え、及びバイパス形成完了しました。マスター、何時でも力の行使が可能です。」
直也がコマンドウインドウを見ながら契約完了を知らせる。
「ああ、わかってる。時間がない」
地面に片膝をついて自分を睨んでくる流光を尻目に、流光に当てていた掌を染闇に向ける。
「早速で悪いがーーー流光、染闇・ヒトガタの存在全てをその力で消滅させろ!」
雷鳴もなく、一筋の雷が目の前に落ちた。
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