第9話

街に出ると見かける人見かける人にうやうやしく頭を下げられる。

そのうやうやしさが「恐怖」からではないことは、上げられた時の表情表情が笑顔であることから把握できた。どうやら頼れるお兄さん的な存在であるらしい。ある一定以下の子供が時々「これあげる」と飴やらその辺の花やら渡してくるところからそう判断する。

決してからかいやすい「年取ってるけどおんなじような存在」とは思われてない、と思いたい。これは切に。




頭に猫を乗せたままなのは如何せん重かったので、ヒトガタにしていた直也に渡されたものを片端から渡していたので直也の手には飴やら花やら、果物やら野菜やら………

「これ、毎回なの?」

「えぇ。マスターが街に出るのはあまりありませんが、街の方々に慕われているのでこうやって色々いただきますよ?」

ほぼ、朔様に渡されておりますが。とつけくわれられる。




たくさんの果物やお菓子やらに喜ぶ子供らしい朔サマが思い浮かび思わず失笑してしまった。




そして、ようやく若者の元に辿り着く。そこは街に一つしかない「ギルド」。

ギルドといっても他に人はいない。実質自分だけの「依頼やり取り所」だ。内容は街の中で済むものやら遠い場所に赴くものまで千差万別。名が知られているので、外の依頼も多いという。




高い認知度と信頼を得ている事実。

元現実では絶対にありえない、「現実離れした」この喜びは、共有できないけど大切な気持ちだ。




いつの間にか直也の手にあった貰い物が無くなっていた。朔サマに送る手段をもっていたのだろうか。

「直也、もう送ったのか?」

「ええ、たくさん頂けるマスターの人望を明確にできる量ですが、何かあったときに両手が塞がっていると対応できませんので」

そう微笑まれると反応に困る。

自分が積み上げた人望ではなく設定された人望だからだ。これはおいおい自分のものにしていくしかない。




ギルドのコマンドリストを眺める。

ーーーーーーーーータイトルだけでさっぱりわからない。




手元にコマンドウインドウを展開。

難易度を☆の数で表示するよう『選択』。

達成条件をベースに種類別色分けを『選択』。




今まで見ていたコマンドリストがわかり易くなる。

「取り敢えず、お試しでっ…と」

☆ひとつ、達成条件は「納品」。依頼主はこの近くに住んでいる薬剤師。

薬剤師が誰なのか分からないのでわかりやすくなるようなマーカーを立つような『選択』し、あたりを見回す。




少し離れたところに赤い三角アイコンが現れている。

取り敢えず直也を連れ、そのアイコンの方角へ足を進めることにした。

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