第7話

世界はラグ・クラウドと、資源世界ウォル・クラスティアで構成される。

ウォル・クラスティアは「リン」と「ナル」で満たされており、「リン」は神やその他ヒトに力を与えるものーーーリザイアの「必須摂取物」であり、存在証明に使用される。強大な力を持つものは、ウォル・クラスティアへのバイパスが太くバイパスが細くなる程に力は減少していく。

それに対し「ナル」は言ってしまえば生命維持には必要がないが、存在していく上で使用していく「欲求解消物質」である。必須ではないが、無ければ存在意味がなくなるようなもの。ヒトで例えるならば、「リン」は生命維持に必要な最低限の衣食住であり、「ナル」はその衣食住を良くしていくためのものであり、娯楽であり、「生きる意味」である。




しかし、神やリザイアは「リン」しか取得できない。「ナル」はヒトのみが取得できるのだ。

そのため神やリザイアたちはヒトとのバイパスを確保し、豊かになろうとする。




ヒトに「ナル」は必要ないため、「ナル」との交換条件として神やリザイアの超常的な力ーーー魔法を行使出来るようになる。




「ナル」を手に入れるバイパスが太ければ太いほど強大な力を持つ神やリザイアを「満」たせ、多くの神やリザイアのバイパスになれる。強大な魔法、多種に渡る魔法の使用が可能となるのだ。






そこまで読んで、コマンドウインドウから目をそらす。

「状況が整理され、表示され…るんじゃなかったっけ?」

「魔法を使う上での状況が整理され、表示されたようです。自動補完機能が「世界」の説明には『選択』が足りないと判断したと考えられます。」

頭の上で申し訳なさそうなオーラを感じ取り、慰めるように直也の頭を撫でておく。

自分の『選択』が足りなすぎたため自動補完機能が上手く働かないのだ。それは自業自得であり、『選択』しない故の現象だ。サポーターがどうにかできるものでもない。ついでに、アイディアと『選択』力のない自分にも今のところどうにもならない。自分の情報も「桜神・朔とのバイパス形成済」としか明記されない。




元現実で人との接点を苦手としていたからか、力を借りる方法や手段の種類が足りない。それと、世界を形成するヒトや神やリザイアも『選択』しかねている。

元々飼っていた猫を参考にした「直也」、チュートリアル的に必要だと思いつくられた「朔サマ」。

今、認識できる存在が自分を含め3つ。

このまま元現実での人との繋がりだけを参考に『選択』していっては「ようこそ○○村へ」としか言わない村人Aが量産されるだけの世界になる。幾ら自分だけの世界だからといってもそれは悲しすぎる。




何か打開策がほしい。

チュートリアルで武器は精製出来た。

魔法も使えるし、魔法の優位性も『選択』した。それだけでは絶対的に世界を構築する情報は足りない。




自分には足りないことが多すぎる。

賽の目の出た方に進む、を決めてもその先のマスの内容が無記入の状態だ。




「直、自動補完機能をもう少しアップグレードしてランダム要素も追加することは出来るか?」

「少々お待ちください。ーーーーーーーーーソレを『選択』しますとマスターの為の世界からずれてしまいます。それでも宜しいでしょうか」

コマンドウインドウにも赤くWARNINGが表示される。

「完全に俺の為からずれるわけじゃないだろ?」

「ええ。優位性は確保されたままです」

ならば問題はない。優位性が保たれているならば不具合が生じたときに『選択』すれば修正は可能だろう。






コマンドウインドウに表示されたWARNING表示を無視して自動補完機能のアップグレードを『選択』する。




その瞬間、目の前に変化が起こる。






眠るように視界がフェードアウトしていった。

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