第4話

自分の想像力なんて、こんなもんなんだなと改めて思った。




桜には美女を。出来ればナイスバディで。




そんなこんなで俗物的なカミサマの出来上がりだ。




「あら、おはよう。遊ちゃん。今日はなんの用事?」

愛称で勝手に呼ぶことや、にこやかに微笑むソレらしい仕草。

いかにもな大和撫子感は自分の好みが出ているのか少し気恥ずかしい。いや、ホントならツンデレが好みでこんなお淑やかな感じは好みとは違うのだが、カミサマのイメージはこんなもんと相場が決まっていて…。

と脳内で言い訳しても無駄なので会話を『選択』する。

「ただのアイサツだよ。朔サマのゴキゲン伺い。」

コマンドウインドウ内でまた文字が羅列されていく。




名前:朔

種類:神

役割:『浄和遊悟』を見守る守護者




守護者の箇所に「!」マークがつけられる。

どうやら重要な役割らしいが重要なだけで詳細は明確化されていない。

その内容も多岐に渡るのか、『選択』が要求される。

知ったことではない、今はそんな気分ではないのだから。




「また『選択』を後回しにして〜。力のあるコは『選択』しなきゃダメでしょうが」

考えていたことを読まれたようで、小さな子供を叱るようにメッ、と注意される。

「権利なだけで義務じゃないんだからいーだろ」

「そうだけど、なんとなくの停滞感?っていうのが出てきちゃうでしょ?」

朔サマの言葉に呼応するように、後ろで直也がうんうんと首を縦に振っている。

どうやら守護者という名の『進行者』でもあるらしい。グダってるなよ、ということだ。

「そんなすぐに進めなくても誰も困らないじゃん。朔サマだって、ホントは困ってないでしょ」

「う〜ん、ホントのこと言われると困っちゃうんだけどなー。オネェサン困らせてそんなに楽しいー?」

ぷくっと頬を膨らませ、近寄ってくる。桜の香りが少し強くなる。その香りは嫌いではない。いや、むしろ好きな部類だが

「近寄りすぎじゃあありませんかねー」

目をそらし、寄ってきた朔サマから逃げる。

どうやらコミュニケーション時の間合いが近すぎるようだ。距離を『選択』したいがナゾの威圧感で『選択』の余地がない。

圧迫されるのみだ。

「あ、今日はアイサツがてら…手伝って貰いたいことがあったんだけど」

その『選択』を待っていたらしい。朔サマと直也も嬉々としてこちらを見つめてくる。

居た堪れない。

「ステータスの確認かしら。オッケー、朔ちゃん頑張っちゃう」

水面下の『選択』に呼応して、朔サマがウインドウを開き一瞥、「武器」を取り出した。ついでにふわっとした衣装も変更したらしい。少しキツめの攻撃的な衣装になる。

いや、なんか全体的に雰囲気変わってますが。雰囲気をフインキと言いたくなるぐらいなんか動揺しそう。




「さ、遊ちゃんの「武器」は何かしら?『選択』する時間は…そんなにあげられないかもね?」




挑戦的なその笑みは、最初の笑みとは打って変わった少し寒気のするソレだった。




自分のステータスを見て、『選択』する。




自分を見つめなければならない感じのするその感覚は、大っ嫌いだった。




成長するには周りを見ているだけではダメ、自分を見ないといけないなんて言葉は放り投げてきたはずなんだけどな。

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