SCP-650-JP「人でなし、でく人形」について

人より人であろうとするゆえに。


オブジェクトクラス:Eucild


SCP-650-JPは、一般的な人の部屋に対『現実改変』製の措置を施した部屋に収容されています。SCP-650-JP本人から自発的に収容されに来ているので、大体のことに従ってくれるとは思いますが、SCP-650-JPからの現実改変能力により「現実酔い」と呼ばれる症状に陥ることがありますので、SCP-650-JPに接触する人は現実改変耐性及びヒューム値変動に対するテストを行い、評価がC以下であれば、対現実改変装備の着用が推奨されています。義務付けられてないです。推奨です。


…これが特別収容プロトコルです。パッと見ただけでも「現実改変」だとか「ヒューム値」だとか変な単語が羅列されていますね。SCP-650-JPに限らずこの手の「現実改変能力者」関連のSCiPによく出てくる単語なのでいっそ覚えちゃいましょう。把握は大体で構いません。大体で良いんです。大まかでいいんです。気分だけ分かれば良いんです。確認テストなんてしませんから。

まず、基本中の基本「現実改変」。文字でなんとなくわかると思いますが、なにかしら「現実世界」に変化をもたらす事です。「現実改変能力」は現実世界に変化をもたらす能力ってことです。具体的に言うなら…ちょっとニュアンスが違うかもしれませんが、対応するSCiPの近くでは「魔法」が使えるようになる、みたいなSCiPが居たとして(本当にいるかは知りません。調べません)、そういうSCiPは「現実世界」で「魔法が使える」ように「変更した」ことになります。この「変更した」ということが出来るのが「現実改変能力」って感じだと思います。

「現実酔い」は、現実改変能力により次々と変わる現実に適応出来ない…対応できないのかもしれませんし、単純に不安感から起こるのかもしれませんが、身体が拒絶し、吐き気、軽いめまい、微熱や立ちくらみなど我々が言うところの「乗り物酔い」に似た症状が起こります。ただそれだけです。

「ヒューム値」とは、現実改変における範囲、及びその強度(その「現実」を改変するときに必要になる値)を測定した時の数値で単位はHm。参考までに「今私たちが生活している(なにも現実改変がされていない)状態の世界」は「1Hm」です。この「1Hm」を超えるヒューム値を持った人間ならばいつでもどこでも現実改変が可能です。このヒューム値を測定する機械を「カント計数機」と呼ばれるもので、また逆に空間のヒューム値を2Hmに固定する機械を「スクラントン現実錨」と言います。


まあ、ずっと用語説明でもそろそろ飽きてくると思うので本腰入れて説明しましょうか。


SCP-650-JPは、ただの動く死体です。いえ、『ただの』とは言えないでしょうが…動く死体です。

なにも驚くことはありません。面と向かい合っても見た目はただの一人間です。目も動くし、口で話すし、普通歩ければ握手も出来ます。何も知らない人は、ただの人間としてしか認識しないでしょう。しかし、SCP-650-JPの身体は何一つ生命を示しません。当たり前ですよね、死体ですから。

生命反応がないのにどうして動くのか?って話ですが、単純です。ここで「現実改変」というワードが出てきます。(このSCiPの現実改変値は内側0.4/1.6Hm、外側0.3/1.5Hm)

現実改変によって生きたり死んだりを繰り返して動いているのではなく、

腕の位置を移動→足を移動→腕を移動→体を移動→…

という動作を秒間286回行って移動しています。ちなみに食べ物の消化とか内臓の動かし方なども可能といえば可能でしょうがそっちも意識しないと動かせない(かもしれない)&そもそも動かさなくても移動出来るので模倣しているだけで実際必要としません。食事も改変により必要としないことも可能でしょうし。

ちなみにSCP-650-JPが適当なボールを投げる時、ボールは自然に放物線を描き落ちますが、そもそものSCP-650-JPの腕は動いてない(現実改変により位置を変更させているだけ)ので投げられたボールにも重力しか掛かっておらず、「自然な放物線を描くボール」はその動きをすべて現実改変により動かしていることとなります。エグい。

SCP-650-JPが実際に「異変として目に見える形で」現実改変を行ったのはSCP-650-JP本人が陳述した一例のみであり、その事象自体もSCP-650-JP本人が現実改変により記憶処理がなされているので問題はないとのことです。有能。

「目に見えない形で」の現実改変は先程言った手足胴体などの移動に加え、血流や脳細胞、神経に通る電気信号なんかも完全に模倣しています。しかもSCP-650-JPの出生から約30年、自分の異常性に気付くことなく他人を模倣し、一般人として生きていた(?)とも話してました。


SCP-650-JP自身による陳述、出来ることなら全部コピペして「ここすき」したかったんですけどね、流石に危険過ぎるので適当解説文だけを置いときます。絶対本家の方見て下さい。おねがいします。


SCP-650-JPかれは流産死体として生まれてきました。この時点で既に自我を持っておりSCP-650-JP小さな命が流産したことを嘆く母親を模倣し、人生(?)初の現実改変を行いました。赤ちゃんが産声を上げたわけです。

おそらく、そのままなんの事件も起こさず、大したいざこざにも巻き込まれずにすくすくと成長したのでしょう。ここら辺は中略して、本編でお楽しみ下さいということで。

前述した「異変として目に見える形で」現実改変を起こした事件は、なんて事のないただの交通事故でした。SCP-650-JPの娘さんに向かって信号を無視したトラックが突っ込んで行ったのです。その時、SCP-650-JPは娘さんを『助けようとして』手を伸ばしました。伸ばした手はそのまま娘さんに届かずにもの悲しい交通事故…にはなりませんでした。

SCP-650-JPの伸ばした手はSCP-650-JPの元を離れ、トラックに直進。結果的にトラックの運転手は亡き人となりました。

その時、SCP-650-JPは初めて『自分の特異性に気がついた』のです。そして『自分が人でないこと』にも。

SCP-650-JP人ならざる者は普通になりたくて、なんとかしてこの『異常能力』を自分のなかから消そうとしました。無駄でした。他のことはなんだって出来る『異常能力』は、『異常能力』を消すことが出来なかったのです。

そうしてSCP-650-JPバケモノは全てが嫌になり、現実改変により財団内へテレポート。そのまま収容された。という話でした。


しかし、SCP-650-JPの肉体にSCP-650-JPの精神が宿っているだけのただの「でく人形」は、その一方でとても人間であると言えると考えます。

』という理由でとして、失敗に終わって。

』という理由で戦場ではなく

我が身が恋しくて、もしかしたら『』と財団施設に入ったのではないかと今なお悔やみ続ける彼を「生物的に人ではない」というだけで「人でなし」と言って良いのでしょうか?


違うと思います。

彼は、人間ではない部分も確かにあるのでしょう。

彼は本来動くはずのない死体です。彼は本来なし得ることのない現実改変者です。

ですが、そういった部分を引っくるめて「人」なんだと、

「人間」なんだと思います。


次回はもちろん未定です。

「人でなし」よりも、我々は人間らしく生きましょう。

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