第37話 赤い暴動

 四限になると、もう、ぐだぁあっと机にへばりついてしまう。やる気なし。早く昼休みになれ。


『家路君の好きな曲って何? オススメある?』


 でも高山さん。シャーキィーンと起動しちゃう。やる気ありまくり。昼休み、まだならずともよし。


 だってさ、コンスタントに高山さんたらメッセージくれちゃうんだもん。僕ぁ、一瞬にして高山さんと一緒の五十年後を想像しちゃったよ。庭で薔薇を育てよう。僕達色の薔薇の花を咲かせようじゃないか。……黄色以外で。


『J・ガイルズ・バンドの「堕ちた天使」 イイデスヨ 高山さんも聞いたことあると思います ノリもいい 歌詞もサイコー』


『OK! 昼休みに聴いてみるね。他には?』


『ザ・クラッシュの「アイ・フォウト・ザ・ロウ」 泣けます ぜひ聴いてみてください 高山さんのオススメは何ですか』


『私はあんまり洋楽聴かないからなー。でも、パパがカーペンターズ好きだよ。車で運転しているとき、いつもかけるんだ』


『ほほう どんな曲ですか』


『ひるやつみ たいくかんそうこうららで まつてるせ』


 ぎゃあ。


 どんな曲だよ!


 マジで心臓が爆裂するかと思った。いや、爆裂したね。俺、もう死んでるからね。


 びっくりし過ぎて、机と椅子ごと、がごんと鳴らしちゃったし、高山さんもぽかんと可愛い顔しているし。


 何だよ、この地獄メールは。


『ps ぎゆうにう あたちもsmsおべむきよおしたせ れち』


 良かったですね。心からその偉大で、ほんのごく僅かの前進を褒め称えます、れち先輩。


 それでも、もうちょっとタイミング読みくされえ。

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