第19話 保健室で黄色

「せんせぇえーいー!!」


 僕が保健室の扉を開けたとき、保健の先生はコーヒーを飲んでいる最中だった。薄く曇った眼鏡と、黒のタートルネックに白衣。エロい。


 じゃない。


 僕は先生の真向かいに置かれた丸椅子に腰を下ろす。


「急にどうしたのかしら? ……いいえ、体調不良はいつも突然なもの、しょうがないか」


 先生はコーヒーカップを机に置く。カップの口紅もエロい。


「何の用かしら? 熱? それともお腹? 人生相談なら昼休みよ」


「えーと、そういうんじゃなくて」


 僕は声のトーンを落とした。他の生徒に聞かれたくない。


「黄色のこと?」


 先生も僕に続く。そして肩をすくめる。


「安心なさい。今は君しかここにいない」


 僕はほっと胸をなで下ろすと、右耳の上、校長が喧しく現在進行形でまくしたている箇所を指さした。


「これ、取ってください、今すぐ」


「不可能ね」


「言い値の三倍払います。校長が」


「任せて。三分で終わらせる」

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