戦隊モノで俺が黄色だった謎 〜放課後戦隊アフターファイヴ!〜

Un-known

第1章 黄色の誕生

第1話 嘆きの黄色

 なぜ僕が黄色なんだ!?


 赤なんて贅沢は言わない。自分の身の程は重々わかっているつもりだ。クラスの人気者でもないし、スポーツ万能でもない、成績が殊更良い訳でもない。


 でもさぁ……。


 黄色はないだろ! せめて緑だ。赤とか青とか身の丈を越えた望みじゃない。僕みたいな平々凡々な人間こそ緑だろ? 黄色なんて……太ってるか、カレーが好きなだけじゃないか。確かにカレーは好きなのは否定しないけど……。


 小さい頃、よく観ていた、熱中していた、そして憧れていた戦隊ヒーロー。世界を悪から救う人類の希望、戦隊ヒーロー。大きくなったらやりたい副業ナンバーワンだった戦隊ヒーロー。


 まさか僕がその一員になれるとは思ってなかったけど!! いや、そんな戦隊ヒーローが実在していたってこと自体が驚きなんだけど!!


 だからって、黄色だけは勘弁して欲しかった……。理想を言えば、斜に構えてリーダー(赤)に突っかかるクールな青になりたかった。人気投票で、もしかすると奥様方の指示で一位になれるかも知れないポジションになりたかった。黄色なんて絶対五位に決まっている。下手をすれば、マスコット的なキャラクターにすら敗ける。いや、赤行きつけの喫茶店のマドンナにも敗ける。


 そう、黄色なんて五色ある内のおまけに過ぎないんだよ。何て言うか、赤、青、緑、桃ってささっと決まった中で、とりあえず数合わせに入れられた色なんだよ。遠足の班決めで、足りなかったから「お前、俺らんとこ、入る?」的な。それこそ適当に誰でも良い的な。


 わかってもらえるだろうか、僕の気持ちを。


 せっかく入れた戦隊ヒーロー、その自分の持ち色が黄色だと宣告された気分を。この外れを掴まされたがっかり感を。そして高一にして、絶対に主役にはなれない、そんな運命さだめづけられた人生を。まだ、大学受験前だよ?


「俺、去年までイギリス駐在でさー、飯が不味くて大変だったんだよ。物価もすげえ高いし」


「へえ、いいねー、エリート会社員は。お前、英語得意だったしな。俺なんか未だにうだつの上がんねえ、平社員だよ。かみさんからもお小遣い制限されるし、こうなるなら結婚すんじゃなかったな」


「そんなに愚痴んなよ。かわいい奥さんじゃないか。あ、知ってる? あいつ、今度の選挙で市議会議員に立候補するらしいよ?」


「マジかよ? でも、昔から生徒会とかやってたからな。当然といえば当然か」


「そうそう」


「……ん?」


「あ、お前は何してんだっけ?」


「……黄色やってます。ほら、戦隊とかテレビでやってる」


「…………あぁ、ああ、あれね。ご苦労さん」


 ね? この微妙な反応。


 もう二十年後の同窓会の様子がわかるでしょ? はい、僕、終了。


 いいんですよ、もう。僕なんて社会の隅っこで丸くなって生きていけば。赤と青、いや緑の付録として日陰を歩いていきます。


 確かに、死んでしまうよりは善かった。正直、あのとき死んでしまうのと較べれば、はるかにマシだ。地縛霊として心霊写真に写り込む自信すらある死だった。だから助けられたことは本当にありがたいと思う。生きていることがこんなにも喜ばしいとは思えなかっただろう。人生は素晴らしい。そんなクサいことさえ、今なら、胸を張って言える。


 でもさ、だけどさ、それでも黄色はないんじゃないかと思うんだよ。

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