第139話 タケル救出1
「きゃあああああああああ!!!!!!!!」
タケル先生の攻撃の余波を受けて私たちは悲鳴を上げます。
途方もない攻撃力の先生に防戦一方でした。
「一度逃げるわよ! クレハ走って!!」
ミリアさんが私を傍に抱えると、そう言いました。
「【
不思議な感覚でした。加速しているというのに、風が強く当たるという感覚はないのです。
ぴょんぴょんと逃げ出す私たちをタケル先生や、その他の自我を失った人々は追いかけてきます。
しかし、『オオイタ』の水蒸気の防壁の外にまでは追いかけてこないようです。
どうにか彼らを巻いた私たちは肩で息をしながらその場にへたり込みます。
「はぁ……はぁ……タケルのやつ後で絶対お仕置きだわ」
「そしてあの女には死による制裁を」
「クレハさんが言うと洒落になりませんわね……」
彼女は既に結構な数の殺人を犯していると聞きます。
初めて聞いたときには、ショックでしたが少しその気持ちに寄り添える部分があると思ったので、今では納得しています。
彼女は狂っているように見えて、狂ってなどいません。
そうでなければ、『ウツノミヤ』で王様を看破するなどできるわけがありません。
一瞬で彼の
今回は、相手がタケル先生。だからこそ、彼を一番よく知っているクレハさんの力が必要だと私は考えました。
「タケル先生を止める方法はありませんの? クレハさん?」
「えっ、私? そうだなー。【狂化】の
「そう……ですの」
「
ミリアさんは【固有空間】から、小さな黒板と白いチョークを取り出します。
そして、大きな丸とその中心の点を書きました。
「【狂化】の魔王が生まれた時の能力を説明するわ。まずは効果範囲。この点が使用者よ。そして、効果範囲は円状になっていて、
「具体的な範囲はどれくらい?」
「前回の魔王は『アキタ』を拠点にして『センダイ』までを支配下に置いていたわ」
「想像絶する範囲ですわね」
「ええ、でも今回の相手がそうとも限らない」
そこでミリアさんは遠くの水蒸気を指差しました。
「どうして、彼らは『オオイタ』から出ようとしないのか、不思議だと思わないかしら?」
「あっ、もしかしてあの女の効果範囲は『オオイタ』全域!?」
「私はそう睨んでるわ」
「それなら、タケル先生を『オオイタ』の外に出してしまえば助けられますわっ!」
行けますわ!
タケル先生は倒しても死なないですが、
でもどうやってそれをすれば……
「でもね、分かっていると思うけど、タケルをここから出すのはかなり難しいわ。私の宝具はタケルに効くから、殺すことはきっとできる。でも、あいつは死なない。だから無力化する必要があるんだけど、それはかなりハードルが高いわ……」
「確かに……そうですわね」
「ええっと……ミリアは殺せるんだよね?」
「ええ。前に
「ミリア、【狂化】を受けた人間は具体的にどうなる?」
「それは自我を失って、動くものに襲いかかるようになるわ。どういうわけか
その言葉を聞いて、クレハさんは指をパチンと鳴らしました。
その瞳は自信に満ち溢れています。
「よし、タケルくんを殺そう。そうすれば元に戻るはずだよ」
「どうしてそうなるのよ! 殺したところで瞬時に元に戻るんだから意味がないでしょう?」
「いやいや、大丈夫だよ。前タケルくんに聞いたんだよね。『タケルくんって大蛇と戦ってたとき、座標が転々としてたけどワープ能力でも得た?』ってそしたら『俺は死ぬと直前に思い描いていたところに戻ることができるらしんだよな』ってさ」
「そういうことですの……! 今のタケル先生は自我を失っていますわ!」
合点がいきました。タケル先生は今何も考えていないと言うことは、死んだ後に戻ってくるのは
やはりクレハさんはこういう時、頼りになります。
もちろんミリアさんもの持っていた情報も重要であったのですが。
ミリアさんは立ち上がります。
その手には黄金に輝く両刃剣……
「作戦は把握したわ。つまり、このミリア様がタケルに気付けの一撃を与えればいってことね!」
魔力を放出し、彼女の服がたなびきます。
最強の魔法少女リリちゃんをあと一歩のところまで追い詰めた彼女の背中はとても心強いものに感じられるのでした。
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