第102話 地下に眠る秘密
王様に先導されるまま、俺たちは上層部の中心部、白城へと向かった。
緊急時だと言うこともあり、各自己の取れる最良の方法で、明るい住宅地を奔走した。
【時間】で速度を強化したミリアは風のように走り、リリはアイリの手を引きながら【
俺は自身の
しかし、俺たちの先頭は王様だった。ミリアが手加減して走っているということもあるかもしれないが、王様はまるで飛ぶように街を駆けていった。
洋風の家屋が立ち並ぶ住宅街を抜けると、きちんと整理された庭園が現れた。
草壁で出来た迷路のような庭園を、王様は高く跳躍すると思えば、彼の靴が煌めく。そして、彼は空中でその足を踏みだし、さらに遠くへと飛んでいった。
ミリアは彼に続き、
俺の力では、彼女たちのように宙を舞うことは出来ない。俺は後ろを走るクレハに振り返り叫んだ。
「クレハ! 頼む!」
「うん! ちゃんと飛んでね、タケルくん!」
彼女は嬉しそうにそう答えると、指を地面に這わせる。
ビリリと光が地面に走り、鉄製のシーソーが地面から浮き上がる。
俺はクレハが走ってくる方向とは反対側に乗ると彼女の一撃を待った。
クレハはポケットから黒く小さなナイフを取り出すと、それを変形させる。
「妖刀紅羽……肆ノ型!」
クレハがそう告げると、ナイフは大きな鎌へと変貌し、地面にそれを突き立て彼女は更に加速する。
「行くよ、タケルくん!うりゃあああああああああああ!!!!!!」
彼女は鎌の刃のついていない部分を使い、まるでハンマーのようにそれをシーソーのもう一方に打ち付けた。
その衝撃により、反対側にいた俺の体は、重力の力を振り切り舞い上がる。
飛んでる! 空飛んじゃってるよ!
元いた世界で飛行機にすら乗ったことなかった俺ははじめての体験に胸を躍らせた。全く異世界に来てはじめての経験をしてばかりだ。
長い跳躍を終え、城の前に着地すると、俺に続いてクレハがこちらに飛んで来ているのが分かった。
俺は彼女の着地点に素早く移動し、衝撃をいなすように、彼女を抱きかかえる。
クレハが唇を尖らせるがそれを無視し、俺たちは王様に続いて城の中に入っていった。
*
厳かな雰囲気の城中には、俺たちの足音がはっきりと聞き取れるほどに響いていた。
王様は、赤い絨毯の大廊下をまっすぐ走り、行き止まりになったところで、立ち止まり、足元の床を踏み抜いた。
ドゴンッと大きな音がなり、土煙が舞い上がった。
俺の前を走っていたリリは、王様のその行動に驚きを隠せずにいた。
そうやら彼が今行こうとしている場所は、リリも知らない場所のようだ。
「ミリアさん、この下です。少々暗いですが、急ぎましょう!」
「灯りなら、私に任せなさいよねっ! 来なさい、
ミリアは発光する宝具を取り出すと、それを先行させる。
間違いなく、これは本来の使い方じゃないだろうけど、便利すぎるその光球の灯りを頼りに俺たちは地下へと続く階段を下っていった。
コツコツ、と靴の音が響く。
地下は通常ジメジメしているものであるが、空調がきちんと効いているのか、地下へと続く道はサラリと湿気ぽくなかった。
不意に靴の音が遠くから反射される。
どうやら広い場所に出たようだ。
1番前を走っていた王様が壁に手を当てると、壁に付けられていた照明が一斉に光を放つ。
一瞬目が眩むような明るさに目を覆う。
光になれた後目を開くと、そこには5メートル程の大きな墓石、そしてその周囲にもいくつかの墓石が建てられるという異様な光景が広がっていた。
1番大きな墓は見上げるようにしないと先が見えない。
「なんだここは……」
「お墓みたいだけど、一体誰のなんだろうね」
「少し、寒いですわ。それも凍りついた様に」
「…………ここは少し……いえ、かなり可笑しな空間ね。……私には分かる」
ミリアは怪訝な表情を浮かべてそう言った。
私には分かる、というのはどういう意味だと聞こうとしたところ、王様が1番大きなお墓の前でミリアを手招きした。
「ミリアさん、今から全力で【時間】の魔力をこの墓碑に流し込んでください。そうすれば【闇】にやられた兵が救えます……お願いします!」
「もしそれをして、何が起こるのかきちんと説明しなさい。こっちは事情が全く飲み込めていないわ!」
「…………他言無用ですよ。ミリアさんが【時間】の魔力を流した後、この墓碑からある者の魂が一時的にですが、この世に降臨します。その者は【闇】に対抗する力を持っているんです」
「【闇】対抗する力って……あんたの言ってるそれは……」
王様はミリアを嘘偽りは一切ないと言わんばかりに真っ直ぐ見ると、口を開く。
「その通りです。【光】の魔法で暗雲を切り裂いた、原初の魔法使い……その魂を一時的にこちらに呼び戻します」
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