第65話 魔法少女との出逢い

 先ほどの爆発音が聞こえた方へと俺は走りだす。

 全くあのバカ金髪はまたなんかやらかしたのか!

 一人で勝手にどっか行って、一人で問題を起こして、一人で……いや、解決は一人じゃないな。

 迷惑極まりないやつだが、あれでもこれから大陸一の巨大国家の破壊を目論む若干、というかほぼ間違いなくテロリスト一味の主犯格で……俺の大切な友達なんだ。

 助けが必要ないって言ったとしても俺は助けに行く。


 困ってたら助けるし、人を困らせたらちゃんと謝らせる。

 それが俺が友達にしてあげられることだと思う。


 地獄へ向かう時に通った本道を進み、途中アイリの指示が入って左の脇道を進む。

 脇道を抜けると、再び少し道幅の広い道に出た。

 俺はその開けた道を見回すと、よく知る金髪美少女がボロボロになった服で膝をついている異様な光景が目に入る。

 嘘だろ……ミリアがあそこまでボロボロになるなんて……ってフクダさんの時もこんなこと言った覚えがある。

 結構ミリア様負けてません??

 とにかく、俺はミリアを倒した敵を探すべく緊張感を持って周囲に気を配る。

 そこでミリアの姿に重なって、同じく金色の髪をしたアイリと同い年ぐらいの少女が大きな銀色の鍵を持ちつつ仁王立ちしているのを確認した。

 にわかには信じがたいが、ミリアを倒したのはあの少女だろう。

 あれ…………?

 というかあの少女どこかで会ったことがあるような…………それもこちらの世界ではなく、元いた世界。

 森の中の一軒家に迷い込んだ、浮世離れした不思議な少女。

 でもありえない。あの少女がこの世界にいるわけがないんだ。


 俺は水色のエプロンドレスを着た少女を見つめると、向こうもこちらに気付いたようで視線を合わせてくる。

 すると彼女は急に瞳を輝かせ、鍵を腰にかけるとこちらに駆け出す。

 そして、彼女はミリアの横を通り過ぎ、俺の元まで来ると


「おにーちゃん!!!! 探したの探したの探したのー!!!!!!」


 そう言って、少女は俺に抱きつくと、頬に小さく頬を寄せ




 …………ん?




 突然のことで脳の機能が一旦止まってしまった。

 俺は……………………キスをされたのか?

 何故? 何のために? そもそもこの子は俺のことを知っているのか?

 疑問が泡のように浮かんでは消え、浮かんでは消え、尽きない。

 俺が固まっていると、アイリが抱きついた少女を引き剥がし、俺は冷静さを取り戻した。


 冷静になって周りが見渡せたから言える。

 俺以上にとなりのクレハの方が思考が止まっていた。

 虚ろな目をしたクレハは先ほどの金髪少女、というか幼女の手を握る。


「どうも。おにーちゃんのお嫁さんです。おねーちゃんって呼んでください」

「お嫁さん……? それは違うの。おにーちゃんのお嫁さんにはリリがなるの」

「……!? おいこのガキ、てめぇなんてこと言って……」

「待てクレハ落ち着け! 子供の言うことじゃないか! それと口悪すぎません!?」

「どいてタケルくん! そいつ殺せない! ただでさえ競争率高いのにこれ以上嫁候補増やされたら、私困っちゃうんだから!! 」

「何訳わかんないこと言ってんだよ! 競争も何も俺を好きなのはお前しかいないだろ!?」


 ダメだ。クレハが暴走モードに入ってしまった。

 しかし、これを狙ったのかは知らないが、クレハのおかげで先ほどまでの張り詰めた緊張感はこの場からは消え失せ、目の前の幼女から脅威を感じることはなくなった。

 サンキュークレハ。


 アイリがクレハに落ち着くように説得している内に俺はミリアを倒したであろう彼女に声をかける。

 背丈の低い彼女に視線を合わせるために俺は膝を地面について話をする。


「ええっと、俺はタケル。君とは前どこかで会ったことがあるかな? 俺は……どこかで会っているような気がしてるんだけど」

「えー!? おにーちゃん私のこと覚えてないの!? それは悲しいの……」


 そう言って幼女は露骨に悲しんだ後、瞳に溜めた涙を拭うと満面の笑みをこちらに向け一歩前進する。

 彼女の顔が俺の真ん前に来て、そしてさらに一歩前進。

 俺の耳元に顔を寄せると、小さな唇で呟いた。


「シャーリー、なの……また会えて嬉しいの」


 息が耳にかかりくすぐったい感覚が俺の全身を駆け巡る。

 それ以上に、彼女は自分のことをシャーリーと言ったか?

 それならば彼女はやはり俺の想像していた人物と一致しているということになる。


 森の中の一軒家。

 近隣には住宅地は一切なく閉鎖された空間。

 大自然に囲まれる俺の家に不思議な訪問者が訪れた時のことを思い出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る