第31話 バフォメット戦④
「バフォメットが復活……した?」
俺の口は自然と、無意識のうちに驚きの言葉を発していた。
一体どう言うことだ?何故バフォメットが生き返るんだ。
あいつはミリア宝具を受け、原型を留めないほどに、それこそ魔法石のみが残るほどまで損傷していたはずなんだ。
ミリアに説明を求めると、具合の悪そうな顔をしながらも力を振り絞り口を開いた。
「あの力はバフォメット、いえ本来ミノタウロスのものではないわ。ミノタウロスの持つ魔法石の力は【身体強化】。あんな芸当はできやしない」
「じゃあどうして!? なんでこうなった!」
「本当なら背中から魔法石がはみ出てしまっている時点で気付くべきだったんだわ。あいつは一個体が持つべき量をはるかに超える量の魔法石を保持している。そんなことが可能なのはね……他のモンスターを食べるくらいしか考えられないわ」
「他のモンスターを食べた……だと」
俺は首を傾げる。
モンスターがモンスターを食べると言うことは共食い?
確かにダンジョンにあんなにいたはずのミノタウロスが勝手にいなくなる考えられないし、共食いはきっとあったんだと思う。
そして共食いすると体の中の魔法石が食べた方に移る、と。
だけど、だからと言ってこの状況に至った理由にどう繋がるのか俺には分からない。
ミノタウロスの【身体強化】を極めると再生まで可能なのか?
ミリアに問いかけると、彼女は首を横に振る。
「違うわ。私が最初にあのダンジョンに入ったとき、中にいたモンスターをざっと多い順に並べると……ミノタウロス、スライム、ゴブリンよ。数の極端に少ないモンスターは省いたわ」
「お、おう。確かにそんな感じだったと思う」
「因みにスライムの魔法石の加護は【再生】よ。分かるわよね?」
「と言うことはつまり……」
あのバフォメットはスライムを食べ、加護である【再生】を手に入れていたと言うことか。
ダンジョンにモンスターがいなかったのはバフォメットが全てのモンスターを食べきってしまったからだったのだ。
まあ、何故バフォメットが復活したのかは分かった。
しかし、だ。
「理屈は分かったよ。とにかくもう一回倒さないといけないってことだろ。それで、復活したバフォメットを倒せるぐらいの力は残ってるのか、ミリア?」
「残ってないわね。私はもう宝具を撃てないわ。魔力切れ」
「おい! それじゃあどうすんだよ! …………そうだ! 宝具以外にバフォメットを倒す術を持ってないか?」
「無いわね。私、基本武器は宝具しかないから」
「なんて贅沢な! それじゃあ魔力を回復させるアイテムとか無いのか? ゲームで言うところの聖水みたいなやつ!」
「あったわ。でもそれはさっきタケルの腕を治した時に使ってしまったじゃない」
「あの玉かよ!? うわああああ!!!! 俺のバカ!! 万策尽きたああああ!!!!」
ダメだ。状況が絶望的すぎる。
俺は頭を抱え悩みもがく。
今回、俺が引き起こしたミスが多すぎる。
まず最初にダンジョン来た時にミノタウロスを倒し切らずに適当にあしらったせいでバフォメットが発生。
バフォメットにやられて切断された腕をミリアに治してもらうために、彼女の宝具を消費。
そしてその宝具が消費されたことによって復活したバフォメットが倒せなくなった。
もしモンスター視点でお話を書いたなら、間違いなく俺は助演最優秀賞に輝くことだろう。
そんな称号いらない。
もうダメかと思ったその時、ジャリと土を踏む音が響く。
半ば諦めかけていた俺たちに、いつもと打って変わって凛々しさを感じさせる鋭い眼差しの幼女が言う。
「わ、わたくしが宝具を使ってみなさんを守りますわ!」
腰ほどの背丈しかない少女に俺たちの命がかかろうとしていた。
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