第29話 バフォメット戦②


『ぐががががががががああああああ!!!』


 咆哮とともに繰り出される必殺の斬撃を俺は間合いを詰めることによって無効化する。

 しかし、見るからに雑な作りの斧を用いてでさえ俺の腕を跳ね飛ばしたその腕力は半端ではなく、接近戦でも俺は苦戦を強いられる。


 クソっ!逃げ場は無しか!

 だけど、時間を稼ぐ以上逃げ回るのは得策じゃない。

 変に逃げて攻撃の矛先がミリアたちに向かうのは一番避けるべきことだ。

 こいつの相手は俺が何としても引き受けなければならない!


 接近しているため、相手の一挙手一投足に注意を払い、尚且つどこから攻撃が飛んでくるのかを常に考える。

 攻撃開始から、こちらに当たるまでの時間があまりに短いのだ。


 右から振り下ろされる拳に絡みつき、そのまま足の力も合わせて腕を折ろうとするがそれは叶わない。

 力強く振るう腕の力に負け、俺の拘束は解け、バフォメットと距離を置いてしまう。

 距離が置いた代償に待ち受けているのは斧による必殺の一撃。

 俺はそれを膝をおり、海老反りになりギリギリのところでかわした。

 そして即座に踏み込みバフォメットに肉薄する。

 そして俺は拳をギュッと固く握り、右手……形成す炎クサナギをつけた腕でバフォメットの腹を殴りつけた。

 拳を受けたバフォメットは若干後ずさりをするがそれ以上に……


(痛ッ!! こっちが殴ったのに!)


 何故か、殴った俺の拳の方がダメージが大きい。

 そういえばさっきミリアが宝具を弾かれているんだった。

 その硬さは折り紙つきといったところだろう。

 まるで鉄の壁を殴ったと言うのが率直な感想だ。

 そしてその硬さにも驚きだが、それと同時に形成す炎クサナギが効いていないというのも驚いた。

 あの巨人、ゴウケンでさえかなりのダメージを受けた一撃が効かないのはバフォメットがモンスターだからなのか?

 モンスターと人間の明確な違い、それは……


 俺はクレハとの話を思い出す。


 *


「タケルくんはドラゴンがどうやって炎を吐くか知ってる?」

「そもそもドラゴンがいることすらしらん」

「うそ!タケルくんの世界にはドラゴンいなかったの!?これは話がややこしくなりそう……魔法石の話だけするね」


 *


 この時は結局どうやってドラゴンが炎を吐くのかについて教えてくれなかったんだけど、恐らくだが、ドラゴンは魔法石の力によって炎を吐いているということを伝えたかったのではないのか?

 だとしたらドラゴンは魔力器官を持っていない?


 じゃあ、ミノタウロスは?

 ミノタウロスが魔力器官をもっているのだとしたら、形成す炎が効かないのはおかしい。

 やはりミノタウロスは、もっと言えばモンスターは魔力器官を持っていないのか?

 そしてそのかわりに魔法石によって加護を得ているの考えると……


 俺の考えがまとまったその瞬間、ミリアの声が戦場に響く。


「タケル!! 魔法石よ! 背中の魔法石にあんたの宝具をぶつけなさい!!」


 予想的中!

 俺はバフォメットの股を潜り抜け、背後を取ると背中に生えたぶっとい紫色の魔法石に真紅の指輪を押し当てるッ!

 青き異形の叫びとともにバフォメットは苦しみ悶え、膝をついた。

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