第13話 お食事中に宝具失礼します
「殺された……?」
クレハの悲惨な過去に俺は目を見開いた。
「そうだよ。冷静になって考えて見て、タケルくん。ギルドや国の力関係が一本で変わってきてしまう様な強力な宝具、それを作る私の家系は皆、その身を狙われている」
「それでクレハのお爺ちゃんが……?」
「お爺ちゃんを殺したのは殺人ギルド……正しい名前は知られていないけど『アンノウン』って呼ばれているの」
「その話は私も聞いたことがあるわ」
ミリアは手を挙げると、その殺人ギルドの話を始めた。
どうやらその『アンノウン』とかいうギルドはここ最近、発足したものらしい。出来て10年かそこら。そもそも誰がそのギルドのメンバーなのかなどはっきりとしないため、発足時期もはっきりとは分からないのだそう。ギルドのメンバーは勾玉を二つくっつけた、太極図の刺青が入っているということ以外、これと言った特徴もない。
ここ1年か2年は大きく活動していないこともあって、まだそのギルドが活動しているのか、自然消滅したのかすら分からないらしい。
「とにかく、その殺人ギルドのせいで宝具の製造方法を私のお父さんは継承されなかったの。つまりは、私にも継承されないということになるよね」
「そこで私がクレハに交渉を持ちかけたんだわ!」
ここぞとばかりにミリアはドヤ顔でそう言った。スプーンをこっちに向けんな。そのままスプーンでシチューを一口食べ、お茶を飲むと続ける。
「私の持ちかけた交渉カードその1、それはクレハの祖父から宝具の製造方法を聞き出すこと! どう? 凄いでしょう?」
「お爺ちゃんから聞き出す……ってそのお爺ちゃんが死んでんだから無理じゃないのか? いや、まさか……!?」
俺は心当たりがあり、ポケットから手帳を取り出す。そうだ、確かあの時、ミリアが自分のステータスを俺の手帳に書き込んで……!
パラパラとページをめくっていき、俺のステータスが書かれたページの次のページ、そこに目的のものが書いてある。
===================================================================================
ミリア・ネミディア
筋力:B
魔力:SSS
体力:A
技量:S
経験:C
加護:【
【
【
===================================================================================
「ミリア、まさかだけどさ、この【時間】って加護で過去に飛べるとか言わないだろうな」
「ご名答よ! 私は飛べる。時をかける美少女なのよ!」
手の甲を逆側の頬に当てるお嬢様ポーズで高らかに笑う。時をかけるなんとかは見たことないけど、まさか目の前に本物が現れるなんて……
「『時渡り』って言ってね、相当魔力の高い【時間】所持者が少し無理して精神を過去に飛ばす秘技なのよ!」
「『時渡り』なんて馬鹿げたこと出来るわけないって私も最初疑ってたんだけどね、どうやらミリアの話は本当だったみたいなの」
「どこで納得したんだ?」
「それは……」
クレハはそう言うと途端に顔を赤くする。
ん? どうしたんだ?会話の流れで赤面するシーンなんてなかったと思うんだけど。
ため息をつくと、見かねてミリアがクレハの続きをしてくれる。
「全く、あんたも初心ね。私が言ってあげるわ!」
「ううう…………やっぱり恥ずかしいからやめて!」
「私はクレハの祖父の秘蔵のコレクションの場所を知ってたからよ! あいつったらここに引っ越す前と同じことしてるんだから呆れるわ。工房にかかってる大楯の裏、そして自室の壁紙を剥がしたところにあるスペース! 他にもあるわよ!」
秘蔵コレクション……? と一瞬思ったが、ミリアは間違いなくアレの話をしている。
健全な男の子なら誰しもベットの下に隠すとかするアレの話をっ!!この金髪美少女なんてことしやがるんだ!?お前は鬼か!? 鬼なのか!?
クレハは目を塞ぎ手で耳を塞ぐ。手からはみ出た耳たぶが赤く染まっていた。
「ここからは私も知らなかったんだけどね。あいつの集めてたそれは『黒髪ロング』『巨乳』ものばかり。これは今度過去に行った時にあのエロおやじに問い詰めるつもりだわ。どうして『金髪碧眼』の良さに気づかないのかしらってね!!」
「ツッコミどころ違うだろおおおお!!!!」
俺は二階でお休み中のオカザキ夫妻に聞こえてしまうぐらい力一杯叫ぶ。まったく変わった感性の持ち主(婉曲表現)だなぁ、ミリアはもう!
そして……俺はテーブルから上にでるクレハの体をじーっと見つめる。髪は綺麗な黒髪で、椅子の後ろにかかるほどに長く伸び、テーブルの上にはエプロンに包まれた巨大な双丘がどっしりと乗っかっている。
間違いない。クレハのお爺ちゃんの名誉のためにも言いはしないが、察してくれ。
「クレハ……ドンマイ……」
「うううううう…………! うわああああああ!!!!!」
羞恥に負けて悲鳴を上げるクレハに俺は手を合わせた。ご愁傷様。
クレハはこんな状況だけど、これじゃあいつまでたっても話が終わらない。俺はミリアに続きをするように促す。
「まあ、そんなこんなで私は死んだ彼と交流できてね、そこで得られる知識こそクレハ、正宗一門にとって喉から手が出るほどのものってわけ」
「なるほどな。それで結局、あの武器たちはなんだったんだ? それが交渉カードの2枚目ってことでいいのか?」
「察しが良くて助かるわ。ほら、クレハ! 起きなさい! 今からかなーり重要なこと言うわよ!」
目に涙をためるクレハは袖でそれを拭うと頬をひと叩きして気分を一新させた。ミリアは一度俺たちを見回すと、大きく息を吸って席を立つ。
そして手を胸の前で押さえ、詠唱を始めた。
「我授かりし四秘宝よ、我が呼びかけに応え顕現せよ…………【
ミリア手を振るうと空間が裂け、その中から四つの装備が召喚される……!
「
一つ、宙を怪しく回る直径30㎝程の光の球体
二つ、持ち手から刀身にかけて全てが水色に輝く細身の剣
三つ、朱に染まり、漂い燃える炎の鎖
四つ、輪郭が揺らぐ、黄金に輝く両刃剣
「交渉カードその2。クレハの祖父が生涯をかけて生み出した最高傑作……いわゆる宝具ってやつよ!」
四つの武器に包まれるミリアは、圧倒的な存在感で俺達の前に立っていた。
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