第12話 クレハは宝具が作れない

 俺の質問にミリアの動きが止まる。

 何をそんなに戸惑っているのかは分からないが、クレハの視線が厳しくなったのを見ると彼女に関係していることなんではないかと想像はできる。

 瞳を曇らせてクレハが言う。


「ミリアさん? 武器って何の話ですか? 私、聞いていませんけど?」

「うっ…………」


 ミリアが顔をしかめる。

 しかめた後、俺を睨むと少し考えてため息をついた。


「良いわ。大事な交渉カードだったわけだけど、クレハはもう一緒に旅に出てくれるって言ってるし、隠す必要も無くなった」

「交渉カード? 何のことだ?」

「クレハ、私が武器のことを話すとなるとあなたのことも話す必要が出てくるわ……ってこんなこと言ったら察しのいいあなたはもう分かってしまうかもしれないけど」

「分かりました……では私から話します」

「その前にクレハ? あなたこれから一緒に冒険するってのにいつまで敬語で話してんのよ! クレハと私は同じぐらいの年だと思ったんだけど、あなたはいくつなのかしら?」


 ミリアがやってられないと言った様子で箸を置く。確かにクレハの態度は俺も気になるところがあった。俺に対する態度とミリアに対する態度が違すぎるのだ。


「16……です」

「あら! 同い年じゃない! 私も16よ? やっぱり敬語じゃおかしいわ!」

「そう……だね。わかった。これからは普通に話すよ。よろしくね、ミリア」

「もちろんよ! 私、同い年の友達が少なかったから嬉しいわ!」


 そう言ってミリアは手を差し出し、クレハはそれを握り返した。美しい女の友情って感じで見ててこっちも嬉しくなる。


「ところでタケルはいくつなのよ? あんたも同い年だったりするわけ?」

「俺は18だよ。2つ上、先輩ってことになるな」

「あっそ。まあこれからもよろしくね。それじゃあ本題に入るわよ!」


 先輩に対しての敬意は全く存在していない様。完全にスルーされた。クソっ! それなら最初から聞くなって話だ。


「まずは私からいくね? タケルくんも知ってると思うけど、もう一回。私の話は私の家系に関する話」

「あれか? 確か正宗一門とか言う話」

「そう。私のご先祖様で物凄く有名な鍛治職人がいたの。それはオカザキマサムネ。正宗って刀を打った人なんだけどタケルくん知ってる?」


 正宗、という名前に聞き覚えはある。確かゲームとかで結構出てくる有名な刀だったと思う。FFで出てきた。他のゲームにも出てた。

 クレハの質問に俺は首を縦に振る。


「タケルくんの元いた世界にもご先祖さんいたんだね。意外かも。とにかくそのマサムネさんの子孫はその神がかった鍛治センスを引き継いでいてね、この世に宝具と呼ばれるものを産み出し続けていたの」

「産み出し続けていた? 今は違うのか?」

「その通りだよ。私は宝具を作れない」


 途端に表情が暗くなる。


「宝具の作り方は一子相伝。代々受け継がれてきたものなんだけど、私のお爺ちゃんはそれをする前に…………何者かに殺されたの」


 突きつけられる悲惨な過去に俺も思わず顔をしかめた。

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