第10話 ミノタウロスとの決着?

 3匹のミノタウロスを倒した後、ダンジョンを奥へ奥へと進んでいく。

 1つ下の階層に行くたびにミノタウロスの数は順調に増えて行った。こんなにミノタウロスっているものなのか!?

 この世界の常識とかが分からないけど、ミノタウロスは結構強い部類のモンスターな気がする。元の世界で遊んだゲームとかでもミノタウロスと言えば物語始めに出てくるようなモンスターじゃなかった。ゲームと現実を重ねるのはどうかと思うけど、実際ゲームのような世界にいるんだ。参考にできるのがそれくらいしかない。


 俺は途中出てくるミノタウロスを軽くひねり潰し、途中からはそれをするのも申し訳なくなり、奴らの斧をへし折って戦いを回避した。それでも向かってくるミノタウロスに関しては、道中拾ったクリスタルでバッタバッタと倒した。


 そして、第10階層ぐらいに到着した時、今までに聞いたことのない音がダンジョン内に鳴り響く。


 それは、まるで爆弾が破裂したような音。

 風をきるヒュルルといった音。

 ゴーゴーという効果音が似合う何かが吹き出しているかのような重低音。


 そしてダンジョン内の気温が明らかに先ほどの階層より高かった。マグマか何かが流れているとかって無いよね……?

 自分の加護がどこまでのレベルかは知らないが、流石にマグマが迫ってきたら死んじゃうと思う。その前に、そんなことになったらミリアも共倒れで、今回俺がダンジョンに潜った目的を失ってしまう。マグマの線は却下だ。

 恐る恐る、音のなる方へ歩いて行く。道中不思議なことに、一匹も生物らしきものがいなかった。


 いくつかの分かれ道を曲がらずにまっすぐ進んで行くと、ダンジョン内に広く開けたら空間が現れる。

 そこにはこれまで以上の、際限なく湧いてくるミノタウロスの群れ、そして、それをまるで塵を払うかのように始末していくミリアの姿があった。


 良かった!ミリアは無事だった!

 俺は彼女の名を叫ぼうとしたが、それより先に彼女の叫びが響く。


無限の炎鎖ダグザ!」


 彼女がそう言って、周囲に纏う赤く透けた色をした鎖が円状に繋がり、その中心から灼熱の熱線を放つ。

 熱線に触れたミノタウロスは、即時、光の粒へと変えられる。それでもなお、勢いを殺さないミノタウロスの群れに、ミリアは作り出した空間の裂け目から新しい武器を取り出した。


 それは、黄金に輝く両刃剣だった。その輪郭をぼやかしながら絶えず発光するその姿は本当に剣であるのか疑いたくなる高貴さを感じさせる。


「我授かりし四秘宝よ、打ちて滅ぼし我行く道を開きたまえ! 不可避の輝剣クラウ・ソラス!」


 ミリアがその名を告げ、剣を振るうと、その剣はミノタウロスの群れを引き裂……かない。


 振った瞬間にミリアの持つ黄金に輝く両刃の剣は、その刀身がまるでモンスターが死んだ際に飛び散る光の粒のように変化した。

 そして次の一瞬。


 ゴゴゴゴゴゴゴ………!!!!!!


 ダンジョン全体が揺らされる程の威力を持った爆風がダンジョン内を駆け巡り、同時にミノタウロスがものすごい勢いで溶けていく。

 大技を打ち魔力が尽きかけたのか、ミリアは片膝をつきその場に倒れた。

 俺はすぐにミリアに駆け寄りその肩をさする。


「おいミリア! しっかりしろ!」

「……あぁ、タケルじゃない。どうしたのよこんなところまで」

「どうしたもこうしたもあるか! 助けに来たんだよ」

「あら、私も舐められたものね。こんな雑魚モンスターに私がやられるわけ……」

「絶賛やられかけてんじゃねえか! ほら、肩貸して」


 ミリアは強がっているが、そんなに余裕かましてられる状況じゃない。先ほどの一撃を見るにミリアは、俺なんかよりよっぽど強い。ミノタウロスの一撃をノーダメージまで抑える俺の加護でもってしても、ミリアの攻撃をくらえばタダでは済まないと本能が告げていた。


 確かに、ミリアは強い。しかし相手が湧きすぎている今の状況では、群れの力が個の力を上回る。そして俺の加護は……個よりも群れに強いもののはずだ。


 傷だらけのミリアを引っ張り第9階層まで連れていくと俺は踵を返し、10階層に戻ろうとする。が、ミリアに引き止められた。


「ちょっとあんた死ぬ気? あの数見たでしょ!? 魔法も使えないあんたじゃ死ににいくようなものだわ! 絶対に死ぬ!」

「大丈夫だ。俺の加護があれば絶対に生き残れる。確かに、魔法は使えないけどな……俺にだって十分おかしな加護を授かっていたみたいなんだよ」

「何よそれ。頭おかしくなったの……ごめんなさい、魔力切れ。少し眠るわ」

「そうか、後は任せろ。ミリアは俺が守るから」

「Zzz…………」


 って寝るの早!?せっかくかっこいいセリフ言ったはずなのにこれじゃあ、あんまりだ。

 まあいい。それより今はミノタウロスだ。


 奴らは何故だか知らないが、大量発生してしまった奴らだけど間違いなくトリックがあるはず。そして大体の予想はついている。

 恐らくだが、不可解な現象は大抵魔力によって引き起こされるものだろう?元の世界になくてこちらの世界にあるものといえば魔力なのだ。


 そしてヒントはダンジョンの宝具。


 クレハはダンジョンに封印されている宝具は魔法石だと言っていた。そして魔法石とは魔力を貯める物体であるとも。だとすれば答えは簡単だ。

 今回の大量発生、宝具の魔力を使い仲間を増殖させている大元のミノタウロスが何処かにいて、そいつから宝具を奪えばミッション完了ということになる。

 こんなに大量のミノタウロスから宝具を持った個体を探すのは大変そうだと思われそうだが、それも違う。奴らは自分の行動で主の居場所を示している。


 次々と湧き出るミノタウロスの本流の元、そこに親玉がいる!


 俺は手を体の前でクロスし、低姿勢でミノタウロスの群れに突っ込む。途中蹴られたり殴られたりしたが、俺の体は傷をつけられることはない。


「…………ビンゴ!」


 俺は流れの根元にいた指輪を手に持つミノタウロスの長から指輪を奪い取ると、ダンジョンに広がったミノタウロスは一斉に光の粒子へと変化し消滅した。

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