第9話 加護の覚醒
「いててて…………」
ミノタウロスの斧による一撃をもろにくらい、ダンジョンの壁に叩きつけられた俺は痛む腕を押さえながら、立ち上がる。
流石はミノタウロス。図体に見合った恐ろしい一撃だ。人生で初めて宙を舞うなんて体験した……って何かがおかしい。
「(そもそも何で俺は生きているんだ……?)」
確か俺はミノタウロスの斧をくらって、斧なんてくらったら受けた腕がどこかに飛んで行ってもおかしくないはずなのに、俺の腕はまだしっかりと体にくっついたままだ。
斧による攻撃を受けたのだから、体が欠損、ないし切り傷が絶対にあるはず。
あるはずなんだけど……
右手、正常。
左手、正常。
外傷、全くなし。
???????????
俺の頭の中に大量のクエスチョンマークが浮かんでくる。俺は生きている、どころか傷一つ負っていない。そんな状況を見て、ミノタウロスは恐れたのか、目の光が弱まった。
何故俺が傷を負って無いのか、思い当たる節が一つある。ポケットから手帳を取り出し、その一番後ろのページ……ミリアが書き写した俺のステータスを確認する。
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オオワダタケル
筋力:S
魔力:F
体力:B
技量:C
経験:E
加護:【
【
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注目すべきは加護の項目。
【
ミリアは俺のこの
今の状況は全て説明できるんだと思う。
加護の説明には『加護を持つ』と書かれている。
ここで書かれている加護という文字は、
おそらく、俺の体が傷を負わなかったのは、防御に関する加護が働いたためだったのだ。この能力の詳しい説明はまだ分からない。しかし……『ミノタウロスは俺に傷一つ負わす事が出来ない』。この事実があればもう十分だった。
俺が一歩進むたびにおびえた様子を見せるミノタウロス。しかし、それでも己に負けじと牛の巨体は俺に向かって突っ込んできた。
手に持つ斧で左から右から俺の体を乱打する。少し痛いが、全く怪我をする感じがしなかった。
打ち疲れたのか休まる攻撃の手。
ミノタウロスの持つ斧の刃を左手で掴むと、右手でそれを殴りつけ、破壊する。力に気づくと、自然と攻撃力も上がっていた。
そのまま斧の柄の部分を奪い取り、それでミノタウロスの腹部を強打するとミノタウロスは光の粒子へと変化し、消え去った。
静まり返ったダンジョンの中に俺と、3つの紫色のクリスタルだけが残される。
自分の加護がわかった今、俺にとってこのダンジョンはあまりに緊張感のないものになってしまった。
1つ大きな欠伸をして俺はクリスタルを拾うと、ミリアの捜索を続行した。
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