なんで爆撃?

週1本の国際便が到着した日、日本のテレビ局のレポーターがやってきた。オレたち3人はインタビューを受け、日本の友達からたくさんの連絡をもらった。サッカー部は山中湖の合宿所で、昨年会ったテニスサークルの女子大生に会えなかったらしい。ざまあ。


師匠は研究所に遺跡で拾ったものを調べていた。

「すっげー! マジすげー」

イケメンが台無しになるくらいくしゃくしゃの顔で師匠が喜んだ。

「どーしたんだよ。下仁田」

「師匠、変」

「あれ、あの塊、やっぱカンデラバースニウムだった。精錬の途中過程の」

「へー」

「そーなんだ」

「すげーだろ?」

今一つ師匠と感動を共有できない岳ちゃんとオレ。


「なあ、つまり、

 あの時代の人が、カンデラバースニウムを精錬してたってことじゃん。

 そんでさ、水作ってたんだ。水! 

 それってすげーことだと思わね? すっげー文明じゃん。

 いや、ひょっとすっとさ、人が精錬してたんじゃないかもしんない。

 自然偶発的な環境で。そしたらそれこそすげくね? 

 思い出してみろよ。

 滝あったじゃん。あの滝変じゃなかった?」


変なのは師匠っす。

「は? 滝が?」

「ふつーに滝だったけど」


「あんなに大量の水があったのに、そこに流れ込むほど、

 それより高い場所には山がそれほどなかった。

 滝ってのはさ、水が集まって来て落ちるんだよ。なのに。

 だからあれは、水がどっかから湧いてるのもあるかもしんない。

 地中の奥で自然偶発的にカンデラバースニウムが精錬されてるかもって。

 そう考えると、すっげー埋蔵量かも」


師匠、落ち着け。言いたいことは伝わってきたから。

「じゃさ、思ったよりも簡単にカンデラバースニウムの精錬ができるかも

 ってこと?」

「かも。もう、研究所じゃ大喜び。あ、SNSで流すなよ。秘密だから」

「秘密は秘密にしとけよ。研究なんだろ?」

「こんなすげーこと、誰かに話したいじゃん」

師匠、単純。


数日後、どうも古代の人たちはカンデラバースニウムから水を得て、灌漑設備を整え、農作物に水を与えて可能性があると分かった。遺跡の中でオレが落ちた幅3メートルくらいの堀は灌漑設備だったらしい。

「カンデラバースニウムを精錬してたってこと?」

「そこはまだ分かんないって。研究中。


そんな話をしていると、LINEのソイルってグループに莉那ちゃんから連絡が入る。


『みんなでテニスしませんか? 友達にジョージを呼んでほしいって頼まれたの』


はっ。師匠ご指名ね。

「僕、テニスどころじゃねーし」

「少しくらい行ってやれよ」

優しい岳ちゃんは言ったけど、師匠はぶっちぎった。あ~あ。


オレと岳ちゃんじゃ役不足だろうけど、莉那ちゃんの顔を潰しちゃ悪いと思って、テニスコートへ行ったんだよ。そしたら、莉那ちゃんは明らかにがっかりしててさ。ソイルの女の子たちも。

なぜか劉がいて楽しそうにハナとテニスしてた。


「「「「「エバンは?」」」」」

「エバンは出かけた」

デートに。

「「「「「ええーーーー」」」」」

ここ、ソイル国の女の子ってはっきりし過ぎ。


テニスの点数のボードの前で岳ちゃんに気になっていたことを訊いた。

「岳ちゃんさー、遺跡を発見した夜に話してたとき、

 警備に銃持ってた方がいいって思ってなかった?」

「うん」

「この国って、そんなに物騒? なんか慣れたら平和じゃん」

「黒い歴史の話あったじゃん。

 最後の。

 国境でパイプラインを警備してたライトブルーソルジャーが襲われたって話。

 あれさ、普通ならパイプラインを破壊するじゃん。

 なのに狙いはライトブルーソルジャーだった。

 イーストソイル国には、ライトブルーソルジャーを狙ってる人がいるってこと」

「昔のことだろ?」

「石油が発見されたのもパイプラインができたのも最近」

「あ、そっか」

「ま、平和だよな。なんにもなきゃいいんだ」

岳ちゃんの心配は、的中はしなかったものの、かなり悪い形で具現化した。

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