⑦
次の日、テレビに映し出される立ち入り禁止区域の画面や、空からの映像、岳ちゃんが撮った写真の映像を、ぼーっと眺めた。
世界中のテレビ局が中継しているようだった。
劉が中心になって作ったホームページはパンクした。
向こうから一方的に電話を切られたままだったのに、父から電話があった。
『優吾、林さんが褒めてたぞ』
今更そんなこと言われても、オレ、気まずいままなんすケドー。お父さん、あの時って、大人の時間だったわけだよね? オレさー、サンタクロースが本当はいないって知っても、オレだけは、キャベツから生まれたと思ってたよ。ちげーんだなー。百歩譲って、お父さんが男だってことは認めよう。だけど、ババアはさー、ないよ。ないない。
「あ、そーなんだ。お父さんによろしくって言われてた」
今更遅いけど伝えてみた。遅くした原因はあなたですが。
『そーかそーか。しっかし、世紀の発見に息子が絡んでるなんてなー。お母さんに変わろうか?』
ババアは、お父さんよりきまずいんだよっ。そこら辺のこと、分かれよ。男同士だろ?
『アホユウ? 元気にしてる? ご迷惑かけてない?』
ほっ。いつもと一緒じゃん。やっぱあの電話はオレの勘ぐりすぎかなー。オレはキャベツから生まれたって信じてる!
「大丈夫。お母さんこそ、慣れない気候で大丈夫?」
『大丈夫。エアコンがんがんにかけて室温は日本にいるときと一緒だもん。アホユウこそ、寂しくない?』
「へーきへーき。お母さんこそ」
『ばーか。オレが一緒なのに寂しいわけねーだろ』ちゅっ
げっ。いきなり聞こえた親父の声。しかも最後のちゅってなんだよ。ちゅって。切ろ。
「じゃーね」
プチ
はー。朝から一気に疲れが。
気を取り直してニーナに電話してみた。遺跡のことでメールがあったから。
ハスキーボイスが耳に響く。話ながら「会いたい」って思う。
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