この時、2人は言った。

「背景にあったのは、砂漠地帯の壮絶な貧困だよ」

「だよな。飢えと渇きを耐え忍んでるイーストソイル国の砂漠地帯でさ、

 ソイル国のライトブルーソルジャーは、本国からの美味いモンたらふく食って、

 エアコン効いた宿舎に住んでたんだもんな。

 恨まれるって」


ソイル国に比べ、イーストソイル国は貧富の差が大きいという。比較的、地形と気候に恵まれたソイル国には、食べることに困る人はいない。しかしイーストソイル国では、海岸部に富裕層が集中し、内陸の砂漠地帯やステップ地帯には、水にも困る人々が大勢いる。干からびた地で、ひたすらじっと死を待つような生活をしているらしい。電気水道はもちろんなく、医者もいない。


そういった人たちがしばしばソイル国に流れてくるらしい。

幸い、石油発掘で急成長中のソイル国には仕事がある。

ただ、子供の場合は仕事に就けない。だから街の中心部には、ストリートチルドレンが大勢暮らす。灼熱と飢えと死しかない場所から来た彼らにとっては、例え家がなくても、この国は天国らしい。


国という概念がなかったころ、同じ言語を話し、同じような生活習慣と宗教を持つ人々は、争うということがなかった。人々は小さなコミュニティの中で生活し、他と関わり、敵対することと縁がなかったのだ。

ライトブルーソルジャーが国境警備に当たるのはほぼイーストソイル国側。

北接するノースアンド国側には、税関の役人しかいないらしい。西や南に至っては国境なんて気にしていないとのこと。つい最近まで世界最貧国だったソイル国に、他の国が関わりたいと思うことなんてないんだってさ。


「へー」

「そーなんだ」

「どこの国にもあるんだな」

オレの頭の中を、空港のライトブルーの軍服を着て大きな銃を構えたソルジャー、バスに乗るときに出会ったストリートチルドレンが過る。

「警備は、ソイル側をソイル軍、

 イーストソイル側をイーストソイル軍ってことになるんじゃねーの?

 一番トラブルが少ない」

劉はもうすっかりホームページを完成させていた。

「だったら、自国の警備なら、銃なんて必要ないのに」

エバンは訴える。

「でもさ、誰かが撃ってきたらどうすんの?」

岳ちゃんが質問。

「イーストソイル国が撃つ理由なんてない」

エバンは言い切る。

「銃を持っていないから敵と思われないんじゃなくて、

 銃を持っていれば近づかないって、オレは思う。

 さっきの話を聞いてさ、でかい銃、必要じゃんって思った」

エバンはさ、理想主義者で、岳ちゃんが現実主義者なんだな。

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