国にもある黒歴史

みんなでエバンの家に帰った。もうすっかり日は暮れたころ。

エバンの家には、劉のお父さんが到着していた。

「やあ、みんな。初めまして」

「「「「こんばんは」」」」

「お父さん、どーしてここに?!」

「おー、水臭いな。大事な話をする息子を見に来たんだよ。

エバンのお父さんに連絡をもらってね。

もちろん、まだ今は話さなくていいから」


劉のお父さんは、劉とそっくり。

「似てる」って言ったら、「髪の毛だけは、母親似だ」って強調してた。

ふむふむ。お父さんに似てたら、髪が薄くなっちゃうもんね。


そこへ、エバンのお兄さん登場。

「今日、何かあるの?」

しばらく話した後、レポートがあると自室へ。

「お腹が空いたでしょ? 劉のお母さんが、夕食のおかずを持ってきてくれたの」

「ミートローフだ!」

つい嬉しくて声に出しちゃったよ。

「高橋はミートローフが好きなのね。いっぱい食べてね」

「はい、マミー♪」

皿を置き、大皿にはトングを用意。なんか、ちょっとしたホームパーティ。豆のスープ、鴨のオレンジ煮、サラダ、野菜のマリネ。おお、フィッシュ&チップス。イギリス領の名残り。

テーブルセッティングを終えたころエバンのお父さん、ダディが帰宅した。

「ごめんごめん。遅くなったよ」

ダディは、大急ぎで着替えて登場。


食事を始めてから五分くらい、五人の高校生は黙々と食べた。本当はすぐにでも喋って楽になりたかったけれど、どーしても空腹が我慢できなかったと、後々エバンから聞いた。オレもいくら昼にバーガーを2個食べたからって、あれだけ歩いたら旗ペコ。

 部屋には、エバン、劉、エバンの兄、両親、劉の父親。それから、岳ちゃん、師匠、オレ。日本人3人は報告未届け人といったところ。


「長い間、話せなかったことがあるんだ」


エバンが父親を見つめる。

部屋の空気に緊張が生まれる。

「小さなころ連れて行ってもらった、グレートリフトバレーの滝、覚えてる?」

「ああ。覚えてるよ。4人で行った」


「あの滝の後ろには洞窟があります」

「洞窟の奥には、巨大な古代の遺跡があります」


「「はっ?」」

父親たち2人は、鳩が豆鉄砲くらったような顔。

「見せよう」

師匠が小声でオレをつついた。

オレの手には洞窟でメモしたものを、分かり易く描き直した紙がある。歩数は距離に換算済み。写真を並べられるよう拡大印刷。そのA4の紙をセロテープでくっつけて、二メートル四方くらいの大きさにしてある。岳ちゃんは撮った写真をプリントアウトして用意。

「失礼します」

一言断って、テーブルの上に紙を広げ、写真を番号に合わせて置いていく。高校生5人で。

「なんだ! これは」

「本当に?」

父親たちは立ち上がって、丁寧に写真を見ていく。

「でかい」

「まあ!」

エバンのお兄さんもマミーも驚いている。

「君たちも行ったのか?」

「「「はい」」」

聞かれた日本人のオレたちは静かに返事をした。

写真やメモを見ながら、エバンと劉は父親たちからの細かな質問に答えていく。いつ見つけたのか、滝からどれくらい離れているのか、火山が活動している危険はないのか、他に誰も知らないのか、などなど。

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