国にもある黒歴史
①
みんなでエバンの家に帰った。もうすっかり日は暮れたころ。
エバンの家には、劉のお父さんが到着していた。
「やあ、みんな。初めまして」
「「「「こんばんは」」」」
「お父さん、どーしてここに?!」
「おー、水臭いな。大事な話をする息子を見に来たんだよ。
エバンのお父さんに連絡をもらってね。
もちろん、まだ今は話さなくていいから」
劉のお父さんは、劉とそっくり。
「似てる」って言ったら、「髪の毛だけは、母親似だ」って強調してた。
ふむふむ。お父さんに似てたら、髪が薄くなっちゃうもんね。
そこへ、エバンのお兄さん登場。
「今日、何かあるの?」
しばらく話した後、レポートがあると自室へ。
「お腹が空いたでしょ? 劉のお母さんが、夕食のおかずを持ってきてくれたの」
「ミートローフだ!」
つい嬉しくて声に出しちゃったよ。
「高橋はミートローフが好きなのね。いっぱい食べてね」
「はい、マミー♪」
皿を置き、大皿にはトングを用意。なんか、ちょっとしたホームパーティ。豆のスープ、鴨のオレンジ煮、サラダ、野菜のマリネ。おお、フィッシュ&チップス。イギリス領の名残り。
テーブルセッティングを終えたころエバンのお父さん、ダディが帰宅した。
「ごめんごめん。遅くなったよ」
ダディは、大急ぎで着替えて登場。
食事を始めてから五分くらい、五人の高校生は黙々と食べた。本当はすぐにでも喋って楽になりたかったけれど、どーしても空腹が我慢できなかったと、後々エバンから聞いた。オレもいくら昼にバーガーを2個食べたからって、あれだけ歩いたら旗ペコ。
部屋には、エバン、劉、エバンの兄、両親、劉の父親。それから、岳ちゃん、師匠、オレ。日本人3人は報告未届け人といったところ。
「長い間、話せなかったことがあるんだ」
エバンが父親を見つめる。
部屋の空気に緊張が生まれる。
「小さなころ連れて行ってもらった、グレートリフトバレーの滝、覚えてる?」
「ああ。覚えてるよ。4人で行った」
「あの滝の後ろには洞窟があります」
「洞窟の奥には、巨大な古代の遺跡があります」
「「はっ?」」
父親たち2人は、鳩が豆鉄砲くらったような顔。
「見せよう」
師匠が小声でオレをつついた。
オレの手には洞窟でメモしたものを、分かり易く描き直した紙がある。歩数は距離に換算済み。写真を並べられるよう拡大印刷。そのA4の紙をセロテープでくっつけて、二メートル四方くらいの大きさにしてある。岳ちゃんは撮った写真をプリントアウトして用意。
「失礼します」
一言断って、テーブルの上に紙を広げ、写真を番号に合わせて置いていく。高校生5人で。
「なんだ! これは」
「本当に?」
父親たちは立ち上がって、丁寧に写真を見ていく。
「でかい」
「まあ!」
エバンのお兄さんもマミーも驚いている。
「君たちも行ったのか?」
「「「はい」」」
聞かれた日本人のオレたちは静かに返事をした。
写真やメモを見ながら、エバンと劉は父親たちからの細かな質問に答えていく。いつ見つけたのか、滝からどれくらい離れているのか、火山が活動している危険はないのか、他に誰も知らないのか、などなど。
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