現地ブス、ニーナ
①
ソイル国での二日目は、スマホの契約。スーパーや日用品を売る店の確認。
国一番の繁華街にはニュータブソンショッピングセンターがあった。大抵のものはここで揃うとのこと。
「へー、スマホばっか」
「アフリカって感じしねー」
旅行者用をレンタル契約する。
「ソイルでは、韓国産のスマホが多いかな」
「銀行自体少ないし、道路もバスも不便だから、みんなネットバンクを使うんだ」
ふーん。街並みとのギャップにびっくり。だってさー、道路だけ出来てても、店との間には土の部分あるし。ショッピングセンターの建物は新しくてきれいでも、携帯ショップのディスプレイは**商店って感じだしさ。
日本人のオレからしてみればりんごマークのブランドよりチープなスマホだけど、ソイルの人たちにとっては、かなり頑張って買うものらしい。レートがレートだからさ。
「今ソイルの若者は、街へ出てきて、頑張って働いて、スマホとバイクを手に入れるのが流行りなんだ」
「そういえば、バイク多いね」
下ネタ、おっと下仁田が道路を眺める。
「スズキとホンダとヤマハが人気」
「へー。車もバイクも日本製やるじゃん?」
オレの言葉に「ね♪」とハナが相槌。こらっ、劉に相槌打てよ。そうそう、携帯ショップへは、留学生全員とエバン、劉、それから教師とで来ている。教師は、成人としての付き添い。この国の成人は18歳。1歳か2歳足りないオレたち。
「ハナ、お揃いのスマホにしない?」
おっと! 劉が積極的に動いた。
「うーんと、劉はどれ?」
! ハナが!!
劉は日本人目線でかっこいい。東洋人だからかソイル人に比べれば細身だけれど、オレなんかより筋肉質でたくましい。俗にいう細マッチョ。顔? 当然のことながら黒髪でエキゾチック。優しそうで妙に色っぽい。
へー。ハナ、オレのこと、ずっと好きだったんじゃねーの? イケメンならいーのか? 上目遣いなんかして。
「たーかはしっ」
ばん
岳ちゃんがオレの背中を叩きながら顔を覗き込んでくる。
「ん?」
「逃がした魚は大きい?」
「まーさか。ブスでいーのかって、劉が心配」
「でも、ちょっと寂しそうな顔だった」
「ぜーんぜん」
どうなんだろ。寂しいのか? 喜ぶとこだろ? これ。
オレの純潔がどーして守りたくもないのに守られてしまったのか。。散々邪魔するブスのせいだった。だから喜ぶべきだろ? これで女子ルールから解放されるじゃん。ま、高校生になってからはさ、諦めて他校の女の子探してたから、あんまり女子ルール関係ねーけど。
少し離れた場所から劉の優しい声が聞こえてくる。
「じゃ、これ。日本と違って、キャリア一緒でも通話料金はかかるんだ。でも無料のアプリをインストールすれば大丈夫」
「そうする。アプリ、教えてね♪」
へー。女の子って、あーやって口説くんだ。勉強になるなー。
バカみたいに劉とハナを眺めるオレ。
そして、莉那ちゃんを見れば、下仁田にぴったりとくっついて頬を染めながら上目遣い。好き好きビーム出まくり。
「高橋、下仁田のそばにいったら、女の子は終わりだって。あいつ失敗したことないからさ。本気もナンパも。なんかさ、女の子は視線と低音ボイスでやられるらしい」
何気にすごいことを教えてくれる岳ちゃん。「下仁田師匠」と呼ばせてください。
「下仁田師匠! どーしてそんなにモテるんですか?」
「は?」
驚く下仁田の隣で、はははっははと大口開けて笑う岳ちゃん。
「オレさ、まじでニーナいいって思うんだけどさ。百発百中の下仁田師匠だったら、どーやって落とす?」
カミングアウトするオレ。
「おい『師匠』やめーい」
「え? 高橋が? どーして? サッカー部だろ? ミスターS校だろ? 逆ナンされまくりで、合コンでモテまくりなんだろ?」
下仁田師匠の隣で岳ちゃんが心底驚く。
「だけどさ、まともに彼女いたことなんてなくって」
「「「「え?!?!?」」」」
えーっと、その場にいた男子全員がオレの顔見てるんだけど。注目するなー!
岳ちゃんと下仁田が驚くのは分かる。どーしてエバンと劉にまで驚かれるわけ?
「携帯を契約した後、男だけでマックへ行こう」
エバンがにやっと笑った。
ソイルにもマクドナルドがある。携帯電話を買いに国一番の繁華街に来ているわけで、つっても、日本に比べりゃささやかなもんだけどさ。
どーゆーことだよ。オレ、おもちゃにされる? いじられる? はー。こんなとこ来てまで。サッカー部じゃ十分、そのことでいじられてるんだよ。二年はオレ以外、全員彼女いるんだよっ。オレのこと「夢見る乙女」とか言いやがるし。
莉那ちゃんとハナは、先生と寮へ帰った。
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