⑤
ザーーーー
すっげ。滝じゃん。
スマホの写真で見せてもらったそのまんま。落差はオレの身長の3倍ちょい。幅はオレの身長の5倍くらい? うんうん、滝のカーテン。
「泳ぎてー」
滝壺の澄んだ水を見て岳ちゃんがはしゃぐ。ここまでかなり歩いたから汗かいたもんな。
「飲んでみたい!」
岳ちゃんに続いてオレも滝壺のそばに行く。
「きれーじゃん。水」
「たぶん飲めるよ」
「サルが飲んでたの見たことある」
「イタチが水浴びしてた」
「おお! うめっ」
岳ちゃんはがぶがぶ飲んでた。オレも一口飲んでみた。師匠は左手を浸してた。以上、性格が分かり易く現れた行動をレポートしてみました。
このままほっといたら、確実に岳ちゃんは服を脱いでまっ裸で泳ぎ出す。
「5キロくらい離れたとこに温泉があるから、今度行こうぜ」
さりげなく岳ちゃんを制する劉。
「うんうん。そっちも行こう!」
「そうか、グレートリフトバレーには、活動中の火山があるし、地熱発電もさかんだもんな」
岳ちゃんと師匠の反応の違いが面白すぎ。
「すっげーもん見せてもらったよ!」
オレがエバンと劉にお礼を言う。
「すっげーもんは、これから」
「こんなもんじゃない」
「本当にすげーんだ」
「マジで」
?????
「へ?」
岳ちゃんまで不思議そう。
「下見では来なかった?」
「ここまで」
「ふーん」
「なんだろ」
エバンと劉は滝壺の脇から、どんどん滝に近づいていく。そして、滝の横の岩肌に立つ、と、
消えた。
「「「え?」」」
岳ちゃんが走る。オレも走る。でも、濡れた岩の上は慎重に。恐る恐る、二人が歩いた場所を辿る。
岳ちゃんが
消えた。
「うそ」
と驚くオレ。
「大丈夫か!」
と駆け寄ってくる師匠。
滝の横に立つと、滝は勢いがあって斜めに落ちている。
だから、ほんの少しだけ、崖との間に隙間があった。隙間っていっても、ぱっかり開いてるわけじゃない。霧状の水や、本格的な水しぶきはある。濡れる覚悟で体を横にして進んでいくと、岩は崖側に窪んでいて、それ以上は濡れなかった。
滝の幅の半分を過ぎた辺りに穴があって、先に行った三人が待っていてくれた。
「「「高橋」」」
「なんだー、ここ! 半端ねー」
すぐ後で師匠が到着。
何この体験! 映画? もう興奮気味のオレ。こう、アドレナリンがばって出てる感じ。
「そっか、だから滝の"カーテン"だったんだ」
師匠の言葉に「そうか」と納得。
ん? エバンはでかい懐中電灯を持っている。
「言われたから持ってきたよ」
と岳ちゃんは普通サイズの懐中電灯。
師匠とオレには、細いけれどめちゃ明るいやつを渡された。ペンライト。ほら、テレビでスパイとかが口に咥えて使うのあるじゃん? それ。
劉なんて、鉢巻みたいに頭に固定するタイプの。
「遅くまで遊ぶのかと思ったよー」
笑いを誘う岳ちゃん。
「へい! こっち」
劉が洞窟の奥へと進む。
「え?」
そんなとこ行くのか?
「すっげーじゃん!」
「行方不明とかなんねーの? こんな洞窟大丈夫?」
ちょっと怖いんだけど。案内される三人の中で、岳ちゃんだけはスキップでもしそうだった。洞窟の中は車が通れるくらいの大きさ。でも、場所によって高さも幅も変わるから、人がやっと通れるくらいの所もあった。もう行き止まりかと思っても続いてる。途中、縦穴状の所を滑るように降りたりした。
どれくらい歩いただろう。10分くらい? もっと?
エバンがデカい懐中電灯を向けた先には、
灰色の廃墟があった。
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