ザーーーー


すっげ。滝じゃん。

スマホの写真で見せてもらったそのまんま。落差はオレの身長の3倍ちょい。幅はオレの身長の5倍くらい? うんうん、滝のカーテン。

「泳ぎてー」

 滝壺の澄んだ水を見て岳ちゃんがはしゃぐ。ここまでかなり歩いたから汗かいたもんな。

「飲んでみたい!」

 岳ちゃんに続いてオレも滝壺のそばに行く。

「きれーじゃん。水」

「たぶん飲めるよ」

「サルが飲んでたの見たことある」

「イタチが水浴びしてた」

「おお! うめっ」

岳ちゃんはがぶがぶ飲んでた。オレも一口飲んでみた。師匠は左手を浸してた。以上、性格が分かり易く現れた行動をレポートしてみました。

このままほっといたら、確実に岳ちゃんは服を脱いでまっ裸で泳ぎ出す。

「5キロくらい離れたとこに温泉があるから、今度行こうぜ」

さりげなく岳ちゃんを制する劉。

「うんうん。そっちも行こう!」

「そうか、グレートリフトバレーには、活動中の火山があるし、地熱発電もさかんだもんな」

岳ちゃんと師匠の反応の違いが面白すぎ。


「すっげーもん見せてもらったよ!」

オレがエバンと劉にお礼を言う。

「すっげーもんは、これから」

「こんなもんじゃない」

「本当にすげーんだ」

「マジで」

?????

「へ?」

岳ちゃんまで不思議そう。

「下見では来なかった?」

「ここまで」

「ふーん」

「なんだろ」

エバンと劉は滝壺の脇から、どんどん滝に近づいていく。そして、滝の横の岩肌に立つ、と、


消えた。


「「「え?」」」

岳ちゃんが走る。オレも走る。でも、濡れた岩の上は慎重に。恐る恐る、二人が歩いた場所を辿る。

岳ちゃんが


消えた。


「うそ」

と驚くオレ。

「大丈夫か!」

と駆け寄ってくる師匠。

滝の横に立つと、滝は勢いがあって斜めに落ちている。

だから、ほんの少しだけ、崖との間に隙間があった。隙間っていっても、ぱっかり開いてるわけじゃない。霧状の水や、本格的な水しぶきはある。濡れる覚悟で体を横にして進んでいくと、岩は崖側に窪んでいて、それ以上は濡れなかった。

滝の幅の半分を過ぎた辺りに穴があって、先に行った三人が待っていてくれた。

「「「高橋」」」

「なんだー、ここ! 半端ねー」

すぐ後で師匠が到着。

何この体験! 映画? もう興奮気味のオレ。こう、アドレナリンがばって出てる感じ。

「そっか、だから滝の"カーテン"だったんだ」

師匠の言葉に「そうか」と納得。


ん? エバンはでかい懐中電灯を持っている。

「言われたから持ってきたよ」

と岳ちゃんは普通サイズの懐中電灯。

師匠とオレには、細いけれどめちゃ明るいやつを渡された。ペンライト。ほら、テレビでスパイとかが口に咥えて使うのあるじゃん? それ。

 劉なんて、鉢巻みたいに頭に固定するタイプの。

「遅くまで遊ぶのかと思ったよー」

笑いを誘う岳ちゃん。

「へい! こっち」

劉が洞窟の奥へと進む。

「え?」

そんなとこ行くのか?

「すっげーじゃん!」

「行方不明とかなんねーの? こんな洞窟大丈夫?」

ちょっと怖いんだけど。案内される三人の中で、岳ちゃんだけはスキップでもしそうだった。洞窟の中は車が通れるくらいの大きさ。でも、場所によって高さも幅も変わるから、人がやっと通れるくらいの所もあった。もう行き止まりかと思っても続いてる。途中、縦穴状の所を滑るように降りたりした。

どれくらい歩いただろう。10分くらい? もっと?


エバンがデカい懐中電灯を向けた先には、


                   灰色の廃墟があった。

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