⑤
今度は2年3組へ行って「ちょっといい?」と三崎莉那ちゃんを呼び出す。
「あ、高橋クン」
うれしっ。初対面なのに、名前知っててくれた。
「三崎さん。高橋です」
「知ってるよー」
莉那ちゃんはクスクス笑う。かわいーなー。
「オレさ、ソイルの留学メンバーになったんだ。よろしく」
「え? そうなの?」
「だからさ、何かと聞きたいこともあるし、LINEのIDを教えてよ」
スマートに決まった。オレは、外見はいいんだよ。渋谷行くと、軽くスカウトされちゃったりする程度に。下仁田と比べられちゃかなわんけどさ。
スマホを近づけてふるふるしていると......
「あ! 高橋クン。なにしてんの?」
「げっ」
ぱたぱたと近づいてきたのはハナ。
くっそー。せっかく莉那ちゃんと2人で喋ってたってのに。
「あ、ハナァ。高橋クンもソイル国に行くんだって」
「はあ? 志望動機のプレゼンとか審査された?」
「ないけど。なんか、そーゆーことになってさ」
「苦労したうちらがバカみたいじゃん。ねぇ莉那」
くっそー。三崎莉那ちゃんの前で。言葉にトゲがあるんだよ。
「ハナは審査でシカゴに決まったのにね。
私に合わせてくれなくてもよかったのに......」
莉那ちゃんが眉毛をへの字にしてハナを見つめる。上目遣いがかわいい。
オレにじゃないが。
「一緒に留学しようって誘ってくれたのは莉那じゃん。場所が変わっただけ」
女同士で美しい友情はいいけどさ。オレのこと忘れてない?
「三崎さんとハナ(三崎さんの前だからブスと呼ばない)って、仲いーの?」
「同クラ。同じ新体操部だし」
「「ねー」」
莉那ちゃんが首を横に倒しながらにこっと笑う。いーなー。かわいー。
「あのさ、オレも莉那、いや、莉那ちゃんって呼んでいい?」
ガツッ
「痛っ」
ブスがオレの脛を蹴りやがった。
「ちょーしこくな」
「うるせ。ハナのこと名前で呼んでんだぜ? いーじゃん。三崎さんのことも」
実際はハナじゃなく、ブスって呼んでるけど。
「いーよ。莉那って呼んで。外国じゃきっとファーストネームで呼ぶもんね」
くー。いいねー。
「じゃ、よろしく。莉那ちゃん」
オレは爽やかに立ち去った。ら、
「ちょっと、高橋クン」
「っんだよ。ブス」
振り向かず、歩きながら答えるオレ。ブスには塩対応。
「私によろしくは? スマホは?」
「ブスのLINEなんて、嫌だけど中学んときに登録済みだしー」
あれ? 後ろの足音が止まった。振り返ってみる。
「私もふるふるしてみたかった」
ん? コイツってこんな可愛い顔すんの? なんつーか、ちょっと拗ねたような。
「ばっかじゃねーの?」
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