今度は2年3組へ行って「ちょっといい?」と三崎莉那ちゃんを呼び出す。


「あ、高橋クン」

うれしっ。初対面なのに、名前知っててくれた。

「三崎さん。高橋です」

「知ってるよー」

莉那ちゃんはクスクス笑う。かわいーなー。


「オレさ、ソイルの留学メンバーになったんだ。よろしく」

「え? そうなの?」

「だからさ、何かと聞きたいこともあるし、LINEのIDを教えてよ」


スマートに決まった。オレは、外見はいいんだよ。渋谷行くと、軽くスカウトされちゃったりする程度に。下仁田と比べられちゃかなわんけどさ。


スマホを近づけてふるふるしていると......

「あ! 高橋クン。なにしてんの?」

「げっ」

ぱたぱたと近づいてきたのはハナ。

くっそー。せっかく莉那ちゃんと2人で喋ってたってのに。


「あ、ハナァ。高橋クンもソイル国に行くんだって」

「はあ? 志望動機のプレゼンとか審査された?」

「ないけど。なんか、そーゆーことになってさ」

「苦労したうちらがバカみたいじゃん。ねぇ莉那」

くっそー。三崎莉那ちゃんの前で。言葉にトゲがあるんだよ。


「ハナは審査でシカゴに決まったのにね。

 私に合わせてくれなくてもよかったのに......」

莉那ちゃんが眉毛をへの字にしてハナを見つめる。上目遣いがかわいい。

オレにじゃないが。


「一緒に留学しようって誘ってくれたのは莉那じゃん。場所が変わっただけ」

女同士で美しい友情はいいけどさ。オレのこと忘れてない?


「三崎さんとハナ(三崎さんの前だからブスと呼ばない)って、仲いーの?」

「同クラ。同じ新体操部だし」

「「ねー」」

莉那ちゃんが首を横に倒しながらにこっと笑う。いーなー。かわいー。


「あのさ、オレも莉那、いや、莉那ちゃんって呼んでいい?」

ガツッ

「痛っ」

ブスがオレの脛を蹴りやがった。

「ちょーしこくな」

「うるせ。ハナのこと名前で呼んでんだぜ? いーじゃん。三崎さんのことも」

実際はハナじゃなく、ブスって呼んでるけど。


「いーよ。莉那って呼んで。外国じゃきっとファーストネームで呼ぶもんね」

くー。いいねー。

「じゃ、よろしく。莉那ちゃん」

オレは爽やかに立ち去った。ら、


「ちょっと、高橋クン」

「っんだよ。ブス」

振り向かず、歩きながら答えるオレ。ブスには塩対応。

「私によろしくは? スマホは?」

「ブスのLINEなんて、嫌だけど中学んときに登録済みだしー」

あれ? 後ろの足音が止まった。振り返ってみる。

「私もふるふるしてみたかった」

ん? コイツってこんな可愛い顔すんの? なんつーか、ちょっと拗ねたような。


「ばっかじゃねーの?」

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