まずは、メンバーに挨拶でもすっか。

オレは、一人一人訪ね歩いた。だってさ、オレの友達って、基本サッカー部。

その次バスケ部とか野球部、バレー部テニス部陸上部ってかんじ。

剣道柔道空手、卓球部には知り合いいねーかも。

科学部とか未知。つーか、登山部なんて存在すら知らんかった。


LINEでふるふるして、一人一人登録すっか。で、ソイルってグループに設定しよっと。もうあるかと思ってたら、なかったんだよ。LINEのグループ。


登山部の剣山は破顔してオレと握手してくれた。剣山岳。周りから「岳ちゃん」って呼ばれてた。日焼けした顔の中に人の良さそうなタレ目。


「知ってるよ。『女がほしい』高橋君だろ? 

 さっき、このクラスまで聞こえたよ。 ミスターS校の」


そうそう、オレは学祭でミスターS校に輝き、学食の食券100食分をゲットした。票集めは簡単。投票所近くの中庭で、野外ライブのときステージから、ラップでお願いした。中庭は来訪者が必ず足を止める場所。投票所は目と鼻の先。投票期間は学園祭2日間。その間の野外ライブは計6回。

めでたくミスターS校になった後、食券を1食分350円で売りさばいて35000円。スタジオ練習代が結構かかったから助かった。別にお小遣いは十分すぎるほど貰えるんだけどさ。

だってさー、オレ、弁当だし。食券使うのは年に数回。


で、登山部の岳ちゃんは、写真が撮りたいんだってさ。


「アフリカには、南北にグレートリフトバレーがあるじゃん? 

 アフリカの端から真ん中までガーっと走ってるんだぜ。

 幅が何十キロとあってさ、長さなんて七〇〇〇キロ。

 ソイルの国って小さいのに、グレートリフトバレーが通ってるんだよ! 

 しかも、すっげー崖があって」

(注:グレートリフトバレーは本当に存在します)


あー。コイツもナンだ。人種的には物理準備室の鉄分多めと一緒のタイプだよな。

山オタク。


「すっげーよく知ってっじゃん?」

「姉妹校になったからさ、その学校の子、

 FaceBookで探して教えてもらってたんだ」


説明する岳ちゃんの目は生き生き。

「へー」

ちょっと引き気味のオレ。

「英語が通じるとこでよかったよな。昔イギリスの植民地だったって。

 公用語は英語とソイル語、半々くらいってさ」

「あ、なんも考えてなかった」

「そ? だいじょーぶ。なんとかなるって」

岳ちゃんは大きな口で笑いながら、オレの肩をばんばんと叩く。


あ、こいつ、大らかってヤツだ。この辺は気が合うかも。


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