②
「は?」
留学?
「去年姉妹校になって、今年から交換留学をすることになったのは知ってるよな」
「はい」
知ってても、オレ、優等生じゃねーし、向上心ねーし、関係ねーと思ってたけど。
「で、シカゴに姉妹校があって交換留学をしてるのも知ってるよな」
「はい」
「そっちで欠員出たんだ。
そしたら、第一希望をシカゴにしてたヤツがソイルからシカゴ留学に変更して、
ソイルに一枠空いた。
今年からなのに、人数を減らすのも良くないってことで、
誰か1名を考えてるとこなんだ」
シカゴなら行きたいけどさ、
確かソイルって、アフリカ大陸の真ん中ら辺? ちょい東?
好みの女の子とかいそうにないしー。
湘南の海がオレを待ってるしさ、横浜の花火大会もさ、
山中湖の合宿所で去年知り合ったテニスサークルの女子大生もさ、
みんなオレを待ってるわけだ。
「なんでオレなんですか?
留学って、もっと違う、ほら、小泉とか麻生とか安倍とか」
学年有数の優等生を挙げてみた。
「小泉はシカゴへ行くメンバーだ。
麻生は我校の名誉をかけて高校生クイズ大会に参加するホープだ。
安倍は体力面が心配だ。
性格的にも、きっちりしてるから、ソイルの生徒と上手くできるかどうか」
「オレもサッカー部がありますけど」
「インハイ予選はとっくに負けたよな?」
「えっと、体力って、そんなに自信はないんですけど」
「お母さんに聞いたぞ。
幼稚園から小学校、中学、ずっと休んでないってな。忌引きだけって」
ババア!
「まあ。えっと、性格って、どーゆーことですか?」
「ああ。ソイルの人は大らかなんだ。バスが1日遅れても気にしない。
その点、高橋は、レポートを1週間平気で遅らせるし、
場合によっては出さないし。大らかだよな?」
ぐっ。
「いえいえ。そーゆー問題じゃなくって。
交換留学生って、学校の代表みたいなもんですよね?
オレより、もっとちゃんとした、ほら、枝野とかさ」
枝野はオレの友達。サッカー部、ボランチ、イケメン、賢い、美人の彼女あり。
「だめだ! 枝野はT大合格の為に、夏休みを無駄にさせるわけにはいかん!」
オレはいーのかよ。
「小池とか健康そうだけど」
小池は、オレが1年のときにうっかり憧れた、カリスマ才女。
「女子は極力避けたい。
ソイルの内情がよくわかってないが、
アフリカではレイプの危険があるかもしれん」
どんな怖いとこだよ。
「菅とか大らかで人当たり良さそう」
「パスポートがない」
もう聞いたんかよ。あと、誰かいるか?
「じゃ、とりあえず、親と相談してから決めます」
「高橋のお母さんは『是非』って言ったぞ。
お父さんが隣のノースアンド共和国に転勤してるから、
お母さんは、夏休みにそっちで過ごすってさ」
はああ?
ババア、可愛い息子に犬の世話を押し付けて、親父んとこ行くつもりだったんだ。
「知りませんでした」
「だから『息子が家に一人にならなくて安心です』ってさ」
がっくり。
「何日間ですか?」
「お? 行く気になったか?」
期間聞いとくだけだよ。
「1週間くらいですか?」
「2ヶ月半だ。それ以上だとビザが要る」
「え? じゃあ、夏休みが倍になるってこと?」
「いや。むこうで授業を受けろ。姉妹校は国1番の進学校だ」
でもさ、日本ほどじゃないんじゃね?
「じゃ、じゃ、じゃ、前期の期末テストも免除っすか?」
「おう。準備のために、夏休みの前期補講も免除だ」
「マジ?」
「留学期間中の模試もなし。
ただ、弱冠、学校の課題が出るけどな。
あとは、帰国後にプロジェクター使っての発表があるくらいかな?」
「すげー」
「あ、そーだ。さっき一緒にいた佐藤ハナもメンバーだぞ。他には、
登山部の剣山と、 科学部の下仁田、新体操部の三崎」
え? 三崎莉那ちゃんも?
「行きます!」
三崎莉那ちゃんってゆーのは、学年有数の可愛い子。新体操部。
ぱっちりした目にぽってりとした唇、ウエーブのあるセミロング。
身長156、推定Eカップのレオタード姿はヤバいくらいに垂涎もの。
いー夏休みになりそうじゃん? 補講もなし。テストもなし。
ひょっとしたら、三崎莉那ちゃんとカレカノになったりして。
「で、いつからですか?」
「ああ、1週間後だ。健康診断と予防接種しとけ」
「げっ」
急すぎ。
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