営業中ー2話[わたしのいっぽ]
棚にはたくさんの個性豊かな便せんと色んな種類のペンが置いてあった。
「うわぁ。すごい!どれも素敵ですね!」
「人には個性が詰まってますからね、それを同じ便せんとペンじゃあつまらないでしょう?」
真帆はその中からコーヒー豆の便せんと頭にパンダが乗ったボールペンを選び席に戻った。
「お客さん、手紙を書くならもう少しリラックスしたほうがいい、これ、おいしいからコーヒーのおともにどうぞ」
マスターがもってきてくれたのは、葉っぱの形をしたかわいいチョコレートだった。
「ありがとうございます。」
一口食べると、ほろ苦く、カカオの香りが口いっぱいに広がり、頭のてっぺんまで柔らかいものが流れていくような気持になった。
「おいしい…」
「お客さん、いい表情してるね、いい手紙、書けそうだね。…じゃあ、私は裏で作業してるからコーヒーのお替り欲しくなったらいつでも呼んでくれるかな?」
「わかりました、ありがとうございます。」
真帆はふぅっと一息ついた後、手紙を書き始めた。
―何者かわからぬアナタへ―
はじめまして、こんにちは、こんばんは。
…なにを書こうかな、とりあえず自己紹介をします。
名前は真帆といいます。血液型はB型で、性格はどうだろ…しっかり屋さん!…だと思いたいです。(笑)
趣味は喫茶店巡りで、コーヒーがすごく好きです。あと、編み物をよくしてます。
この季節だと、足が冷えるからあったかい靴下を編んだり…です。
あなたは今、何をしていますか?
私は今、不思議な喫茶店でこの手紙を書いています。
1か月前まで仕事ばかりの日々で、趣味の喫茶店巡りができてなかったんだけど
仕事を辞めて、こうやって素敵な場所に巡り合えてうれしく思っています。
もしよかったらお返事ください、待ってます。
―真帆より―
…ふぅ、こんなもんかな…
久しぶりに文字を書いた気がする…緊張したな…
「お疲れ様です、書けましたか?」
いつの間にかマスターが目の前でカップにコーヒーを注いでくれていた。
「はい、久しぶりにちゃんと文字を書いた気がして、なんだか緊張しました。お返事、来るといいんですが…」
「大丈夫、その気持ち、きっと相手にも伝わりますよ。そういえば、お客さんお名前聞いてもいいかい?」
「真帆です。これからよろしくお願いします。」
「真帆さんか、素敵な名前だね、こちらこそよろしくね。来週にはまた返事が届いていると思うから、またいつでもいらっしゃい。」
「わかりました、では、また来週、マスター。」
カランコロン…
外に出るとひんやりした風が目の前を通り過ぎた。
もう冬が近づいてるな…
お気に入りのコートどこにしまったっけな…
そう考えながら、家路についた。
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