第26話 『軍隊行進曲』 シューベルト
ピアノの連弾用『三つの軍隊行進曲』。
有名なのは、第1番です。
しかし、管弦楽用に様々に編曲されてきたようで、『ホーム・コンサート』と呼ばれるような、セミクラシックの名曲集レコード(今はCD)には、必ずと言ってよいほど入っている超名曲。
しかし、この曲は、シューベルトさんの多くの作品の例にもれず、実はなかなか恐ろしいところのある作品です。
それは、特に中間部の音楽であります。
いかにも楽し気な主題が中心なのですが、そこはシューベルトさん。
そのままにはしておきません。
長調だったはずのメロディーが、いつのまにか、ほろっと短調に傾いて行くのです。
これが、恐ろしくらいに、素晴らしいのです。
もちろん、ピアノの連弾でも、そこの部分の表現は可能なのでしょうけれど、どうしても音質が一様だという特徴からは逃れられません。
管弦楽になると、さまざまな楽器の組み合わせが可能になりますから、陰影の出し方が無限に広がります。
まあ、もちろん、指揮者様がどう考えるかにもよりますでしょうけれど。
この曲には、ハンス・クナッパーツブッシュさまという(通称クナ)、ブルックナー先生や、ワーグナー先生を得意とした、巨人指揮者さまの録音もあります。
しかし、やましんが子ども時代から大好きで、いまでもこれを超える録音はないと思っているのが、アーサー・ウィノグラードさまという方が指揮をしたLPです。
もう、10年も前になるでしょうか、たしか、アルゼンチンあたりの会社から、この方の指揮した録音が、沢山CDになって出ると言う情報があり、そのなかに、このシューベルトさまも含まれているというので、さっそく予約をして楽しみにしていたのですが、結局届くことはございませんでした。
同じシリーズで出たCDに、あまりに音がよくなかったり、という不具合がたくさん生じたので、中止になってしまったのかもしれません。
この演奏、クナ先生のような巨大な表現ではないのでしょうけれど、やはりオケの音の使い方と、その、さらっとした中の表現力が、ものすごく良かったのです。
侮ることはできない、恐ろしい作品です。
とはいえ、まあ、楽しく聴いていただくことこそが、本来の意味なのだとも、思います。
あまり個人的な思い入れが強くなりすぎると、危険度が増します。
つまり、同意してくれない人を、攻撃するような可能性も出て来ます。
かつて、とあるレコード屋さんの店内で、お客様同士が、何かの曲の解釈をめぐって、けんかをしたりも、なさっていたような気がします。
「困ってしまって・・・」
と、あとから、奥様がぼくに、おっしゃっていたかと。
まあ、そうなると、どちらかのサッカーの試合の、乱闘みたいなことにもなりかねません。
何かの本で見たところでは、確かイタリアかどこかあたりの歌劇場で、悪役を歌った歌手さんが、怒ったお客様に駅まで追跡されたとか・・・も。
音楽は平和に、楽しく聞きましょう。
『軍隊行進曲』、だとしましても。
************うき 💂 💂 💂 うき************
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