第16話 『協奏曲集 四季』 ミヨー
ミヨーさん(1892~1974)と言いますと、『屋根の上の牛』とか『スカラムーシュ』とかが、なんとなく思い浮かびますが、イメージとしては、『何か楽しい音楽を書いた方』という感想が、ぼくのなかには強いものですから、この方の音楽を聴くと言うことになれば、そういう先入観が先にあって、聴き始めるわけです。
まして『四季』といわれれば、日本人にとっては、桜から、雨、猛暑、紅葉、猛吹雪までの多彩なイメージがありますから、どうしたってそこにこだわりが生じます。
さらに、クラシック音楽ならば、ヴィヴァルディ先生や、チャイコ先生を思い浮かべてしまいますよね。
しかし、そこはさすがにミヨー先生で、そうした、なんとなくほんわかしたイメージを、なぜか、みごとにひっくり返しながら進みます。
これ、 春?
これ、 夏?
え? 秋?
ううん、冬?
だいたい手元にあるLPレコードのジャケットだって、明らかにヴィヴァ先生のイメージの絵画が『どん』と載ってるじゃあないですか!
このLPレコードが出た当時は、ミヨー先生はまだ、ご健在でした。
まして、この演奏の指揮者がご本人なのですから。
なにせミヨー先生は、大阪万博の後まで生きていらっしゃった方ですから、やましんなども、そのころは、もう高校生でした。
つまり、なんだか、同世代みたいな感じさえあります。
まあ、『現代音楽』の領域にあった方です。
そこを思うと、これはまた、とっても聞きやすくて、楽しい音楽なのです。
(『ゲンダイオンガク』、というのは、素人筋ではやや皮肉に、『訳が分からない全然楽しくない音楽』という意味に使われることがあるのですが・・・)
また、無調の音楽ではないので、そこも親しみやすいと思います。
でも、曲の最初で、『おやや・・・やーめた!』と言ってはなりません。
お耳が慣れてくると、これが『快感』に変わってくるのです。
そこが、また、ミヨー先生の天才です。
曲ごとに、ソロの楽器が変わります。
『春の小協奏曲』では、ヴァイオリンです。
木管楽器との絡み合いや、符点のリズムなどが『春』らしいと言えば、確かにそうですよね。ちょっとジャズ風のイメージもありますか。後半、ヴァイオリンのソロがとっても細かい動きをするのが印象的です。
『夏の小協奏曲』では、ヴィオラ。
こっちが『春』だろう、と思ってもそう違和感はない気もするのですが、作曲されたのは『春』よりも20年近く後らしく、いささか渋いと言えば、そうかも、なんですが・・・。でも、これは良い音楽ですなあ。
『秋の小協奏曲』は二台のピアノ。
ホルンが3本。これはいかにも秋っぽい開始です。
そうしてソロピアノが、『小さい秋』の序奏のような感じでさらっと入ってきます。
「おお!秋だ!」
と思うのは、日本人だけでしょうけれど・・・
そのあと、ピアノはめいっぱい駆け巡ります。
駆け巡った後、突然静かにささやき始めます。
「おお!秋だ!」
これは、皆そう思うでしょう。
『冬の小協奏曲』では、トロンボーンがソロ。
「ううん・・・冬かあ・・・」
そうですね、背景の弦楽合奏とトロンボーンが、お互いに語り合うと言うよりは、それぞれが自分の立場を主張している感じもしますが、弦楽合奏の方がとても親密で暖かいイメージになっていて、確かにここは『冬』・・暖炉とか、家庭内の会話・・・などを思い浮かべさせます。
ただ、それよりも『協奏曲』としての面白さが抜群です。
トロンボーンのソロ音楽は、このレコードが出た当時は随分珍しかったようですけれど、その後、北欧から名人が出たりして、ぼくたちの、この楽器に対する親しみは、ぐうっと高くなりました。(クリスティアン・リンドベリさま。)
曲全体でも、ここは聞きどころです。
なかなか、『快感!』 で聞きとおせる良い音楽です。機会があれば、是非どうぞ!
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