第15話 『交響曲第4番』 メンデルスゾーン
いわゆる『イタリア』交響曲ですね。
これは、ぼくには、ちょっとおかしな意味で、トラウマがある名曲であります。
中学生時代には、盛んにこの曲をLPで聞いていたわけなのですが、そのLPには傷がありました。
現在の世代の方には、ちょっと、なかなか思いつかないかもしれませんが、レコードの場合、傷があったり、大きなゴミが落ちていたりしますと、『針飛び』を起こすのです。
つまりタイムワープするのですね。
そこで、この曲を聴くときには、決まった部分でかならず『ぶちっ!』と言って、音楽がワープするわけです。
それが当たりまえになっていまして、そこに来ると心臓が『どきっ』とするわけです。
必ずそうなると、ちゃんと解っていてもです。
さて、すると、何十年もたった今でも、そこに来ると『どきっ』とする訳です。
CDで聞いていれば、そこで音が飛ばない事は解っているのに、です。
これは、小さなことだけれど、『心の傷』であることは間違いがありません。
こんな小さなことでも、心には傷が残るのですから、交通事故だとか、火事だとか、いじめだとか、誘拐だとかになれば、どれほど大きな傷が残るか、想像するだけでも恐ろしいことなのです。
・・・それはさておき・・・
この音楽、頭からどかっと来ます。
それも、もう元気いっぱい! 楽しさいっぱい! 明るさいっぱい! 開放的世界の極致!
かつて、どこかで聞いた、テーマ・パークの宣伝文句みたいな言い方ですけども。
こんなに楽しい始まりを持つ交響曲は、他にない! と断言しても、まあ、そう間違いにはならないでしょう。
また、ぼくは、第1楽章の中間部分(ソナタ形式の展開部)で、短調になって盛り上がるところも、大好きです。
しかし、よく言われますが、特筆すべきは、やはり終楽章です。
この楽章、最後まで、短調で書かれているのに、暗くない。
南国の夏の日に、狂乱的に人々が踊りまくる姿が、くっきりと浮かび上がるのです。
これは、第1楽章冒頭部とのコントラストが、かえってとても際立つのに、まったく違和感がないという、ちょっと不思議な、でもメンデ先生の『技』が際立つ、大傑作です。
こういうのは、時代は全く違うけれど、大バッハ先生の『管弦楽組曲第2番』の終曲である《バディネリ》とともに、双璧だと思います。
ぼくの心の『どきっ!』も、最後には、ふっ飛ばしてしまいそうです。
なにか楽しくないことがあって、もやもやしているときに、『うつうつ』音楽を聴くのも悪くないけれど、この曲で全部まとめて(まあ、短時間にせよ)そんな気分を、遥か彼方にいっぺんに追放してしまうのも、実に良い方策でしょう。
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