ヴァイスをヤンデレにしてみた その1(自重しない)

 蝋燭ろうそくの薄明かりがぼんやりと照らす、ヴァレンティア城の地下室。

 須王龍野は、ベッドに仰向けになりながら、両手を手錠で拘束されていた。

「うわ……何だこりゃ」

 おまけに手錠は、天井から降りている鎖で更に拘束されている。行動範囲を完全に制限されていた。

「つーか、何で俺はこんなところに……? そういえば、さっき渡された紅茶……あれを飲んでからの記憶が、さっぱりねえや」

 龍野が思考を巡らしていると、ドアがぎぃと音を立てて開いた。


「おはよう、龍野君。お目覚めみたいね」


 いつもと変わらぬ、ヴァイスの優しい声。

 しかし龍野は、背中に氷水を流し込まれるような感触を覚えた。

「おうおはようヴァイス、さっさとこれ取ってくれや」

 必死に動揺を押し殺し、ヴァイスに主張を投げつける。

「うふふ。嫌、と言ったら?」

「こいつを引きちぎって逃げてやる」

「出来るものかしらね?」

「やってみるさ」

 龍野は右手の人差し指全体に魔力を集中させ、手錠を切断して逃げようと試みる。

 だが、手錠は1mmの切断痕すら残さなかった。

「!?」

「当然よ、これは『賢者の銀』で作った手錠なのだから」

「何だよ、そりゃ」

「『魔力を吸収する銀』と言えば話は早いかしら?」

「――ッ!」

「気づいたみたいね。そうよ、魔力で断ち切ろうとしても断てないの」

「クソがっ、何が目的だよ……!」

「安心なさい、龍野君。貴方はここで、私の庇護を受けて過ごすの。意味、わかるかしら?」

「わかるものかよ……!」

「なら端的に言うわね。『逃がさないわ』」

「ひっ……!」

「安心して、あらゆる世話は私が全部してあげる。それにこの鎖は長いから、部屋の中ならある程度の行動の自由は残されているわ」

「ぐっ……ヴァイスお前、どうしてこんなことしやがるんだよ!?」


「簡単よ。龍野君を私のものにしたいから」


 その一言に、龍野は絶望感を覚えた。

「(ダメだ……ヴァイスは本気だ。本気で俺を、この部屋に……)」

「さあ、まずは手始めに、貴方をもらい受けましょうか……その前に」

 ヴァイスがドアまで歩いた後、ガチャリと鍵を閉める。ノブをいじって確認したのち、龍野のいるベッドに戻ってきた。

「これで邪魔者は誰一人、入れないわね……。うふふ、龍野君。たっぷり、私を堪能してね」

 そう言い終えると、ヴァイスは龍野のズボンを降ろし始めた――。


     *


 うふふ。久しぶりに見るけれど、相も変わらぬままなのね。

 見るだけで私をここまでたかぶらせるなんて、いけない子。


 だからこそ、こうやって独占するためのお膳立てをしたかいがあったわ、うふ。


 あら? 既に準備万端じゃないの、龍野君。まったくもう、楽しみが減ったじゃない。

 けど、おかげで手間は省けたわ。後は邪魔なものを脱いで、目的を達成するだけね。


 ――っ。いたた……。


 けど、これで後は時間をかけて、魔力を段階的に貰い受けるだけね。

 あらあら、うふふ。怯えと怒りの混じったような表情で私を見る龍野君、愛しいわぁ。

 あまりに愛おしすぎて、キスしちゃった。龍野君の首筋にだけどね。

 そしたら、ビクンッって震えるの。まるで大きな音に驚いた、ウサギさんだわ。そして私が包み込んだこの子も、一緒に震えてる。


 じゃあ、もっともっと苛めてあげるわね。


 私はゆっくりと腰を上げ、そして激しく打ち付けた。


     *


 状況が、さっぱり呑み込めねえ。

 ヴァイス……どうなっちまったんだよ?

 俺がぼんやりしている間にも、ヴァイスは腰を打ち付けてくる。

 困ったことに、体が勝手に反応していやがる。つーか呼吸するのが苦しい。

「っ……やめろ、やめてくれ、ヴァイス……」

 俺が必死に呼び掛けても、ヴァイスは動きを止めない。むしろキスで口を塞いでくるくらいだ。

 くっ――ああっ!

「……!」

 やっちまった。冗談抜きでやっちまった。

 これ、相手が相手だったら、訴えてたぞこの野郎。

「ハァ、ハァ……」

 ともかく、今は状況が変わるのを待つしかない。

 そう思った直後、俺の意識は急速に途切れた。


     *


 ん、龍野君?

 ああ、そっか。気を失ったのね。

 けど、私は構わないわ。気を失っていても、貴方のこの子は、臨戦態勢みたいだから。

 うふふ……まだまだたっぷり、愉しませて頂戴?

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