シュシュの性格も大胆にしてみた(自重しない)2/2

「ふふ、兄卑の……もらっちゃった」

「馬鹿、痛いくせに無理しやがって……」

 そう。実際私は、強烈な痛みを感じながら、兄卑を蹂躙しているの。

「別にいいわよ、このくらい」

「よくねえ! 俺が襲われるのはともかく、襲う側が辛そうにしてるのは、見てらんねえんだよ!」

「ふふっ、やっぱり優しいのね、兄卑。けど……今までの私は、兄卑に心を傷つけられたのよ?」

「な……何だってんだよ!」

 兄卑がいぶかる様子を見て取ったところで、私は本題を切り出した。


「兄卑……私の体には、不満かしら?」


「不満じゃない!」

「嘘つき。私が誘っても、反応しなかったくせに」

「そ……それは……」

「だから魅了するために、手荒くしたのよ、兄卑。わかるかしら?」

 そう。私の体が傷ついてもいい。

 けれど兄卑に――彼に――何もされないというのは、どうしようもなく苦しい。

「それじゃ……動くね」

「ば、バカっ、やめろ……!」

 いやよ。兄卑を苦しめるのが目的なんだから!

 私はゆっくりと、腰を動かし始める。

「いっ……!」

 その度に、痺れるような痛みが走る。

 何よ、”気持ちいい”なんて嘘じゃないの。

「いい加減にしやがれシュシュ!」

 兄卑が私の腰を掴みにかかる。

 けど……もう、我慢しない。私は兄卑の腕を止めて手首を掴み、そして指を絡めた。睡眠薬で弱っていたから、何とか止められたわ。

「ぐっ……お前、握力強っ……」

 私達は手を繋いだまま、一心不乱に動き始めた。


     *


 それから十数分くらい経った。

 未だ私は、兄卑を見下ろしながら蹂躙していた。

「はぁ、はぁ……どうよ、そろそろ限界じゃないの、兄卑?」

 兄卑は何も答えない。まあ、当然か。

 男は二つ以上の行動を同時に出来ないらしいからね。

 すると、急に兄卑が私を突き上げてきた。ヒッと息を呑んだ直後、腹部に熱が広がった。

「あっ……」

 こらえきれずに、声を出してしまったじゃない。やっぱり生意気なのね、兄卑。

 けど、こうなるってことは……私に、満足してくれたってことよね。

 私は一旦組んでいた手を解いて、繋がりをやめた。

「ふふ……これで証明されたわね、兄卑」

「な……何が、だよ?」

「”私が兄卑を魅了出来る”ってこと」

「馬鹿言うなよ、おい。魅了されたんじゃなくて、無理矢理されたんだよ。まあそこは、誰にも言わないけどさ(努力賞だ。気持ちよかったことだけは認めてやるよ、シュシュ)」

「っ……また、そうやって!」

「おいおい……盗人猛々しいのも大概にしてくれよ。このくらいの仕打ちなら、笑って許してやれるけどさ……」

 駄目。我慢できない。

 言葉で説得しようかと思ったけど、やっぱり無理があったみたいね。


 気が付けば、兄卑が左の頬を抑えて、ぽかんとしていたわ。それに私の右手が痺れていたの。


 後から考えると、『何をしているのよ、私』と思っちゃう。

 けど、それでも、兄卑には私を”一人の女”として見てほしかったの。

 おまけにずうずうしいことに、兄卑の頭を両手で持って、いわゆるフレンチキスをしてたの。

 やがて満足した私は、無意識に……こう、口走ってたみたい。

「兄卑……お姉様としていたときと同じように、して……? お願い……」

 何を言っているんだろうね。けど、兄卑が欲しくて欲しくてたまらなかったの、そのときはね。


     *


 気付けばもう、深夜の一時。

 私が意識を失ってから、どうなってたかはわからないわ。

 ただ、私の素肌も、髪も、ネグリジェも汚れていたの。シャワーを浴びたくなるほどにね。

 そして兄卑は、私に背を向けていたわ。

 誘惑の結果は……まあ、成功では、あるのでしょうけど。ため息が出そうだわ……何をしてしまったんだか、私。

 しょうがない……今日、きっちりリベンジしなくては……ね。


     *


 午後二時。

 私はお姉様の部屋に招かれ、そこで二人きりになっていた。

「それで、昨日の結果は……その、失敗、しましたの」

「そう。私の胸で泣いたらどうかしら?」

「うう、お姉様……ぐすっ……」

 それからは一時間ほど、お姉様に甘えさせてもらったわ。

「さて……シュシュ。本当に誘惑が失敗したかどうか、私が聞いてくるわね」

「お願いします、お姉様……」


     *


「ふう……トレーニング、終わりか」

「お疲れ様、龍野君」

 私は龍野君の様子を探りに、トレーニングルームに向かったわ。

「龍野君……ちょっといいかしら?」

「何だ?」

「昨日……シュシュと、何かあったのかしら?」

 我ながら、なんて短絡的な質問なんでしょう。けど、むやみに隠す必要も無いわね。

「ああ、あったぜ。お前と同じエロい寝間着で、俺を襲いやがった。おまけに何を思っていたのか、俺にビンタまで食らわせて……わがままだったぜ(流石にビンタされた後の九連続は、伏せるか。まあヴァイスなら、黙って聞き流してくれるだろうけど……)」

「そのことについて……嫌な、気持ちになった?」

「いや? 別に。何だかんだ言っても、あいつにも世話になってるからな」

「そう……」

「どうして、そんなことを俺に聞くんだ?」

「龍野君がシュシュを嫌いになってないか、ってことを聞きたかったの……」


「そんなわけないだろ。ああ、そうだ。今夜からさ、そうだな……九時ごろに、俺の部屋に来るよう伝えてくれよ」


「! わかったわ、龍野君(よかったわ……シュシュ。ひとまず安心ね)」

「それじゃ、俺は本読むんで、先に」

「ええ」

 後は今夜の二人次第ね。

 まあ、嬉しそうだったから、おそらく大丈夫でしょうけど。


     *


 時刻は夜の九時。

 お姉様の仲介で、何とか関係を戻せそうね。

 私はカードキーを取り出すと、リーダーに通して、ドアを解錠する。

 開いた八連のドアを通り抜けて、兄卑の目の前に立った。

「兄卑、その……昨日は、ごめんなさい」

「はいよ。それで、今日は誘惑しないのか?」

「え?」

「エロい寝間着着て、俺を襲わないのか、っての」

「いや、ちょ、兄卑、正気なの?」

「正気も何も……いつも通りだぞ? どうした?」

「待って、待ってよ兄卑……。私、昨日の夜に、兄卑にひどいこと……」

「ひどいこと? 何のことだ?」

「えっ?」


「まったく、お前が大胆すぎるから、逆に俺がひどいことしちゃったじゃないか」


「ええええええっ!?」

 ちょ、ちょっと待って兄卑! 確かに私が気を失ってる間にしたんでしょうけど、それにしても、私のしでかしたことを微塵も咎めないなんて!?

「さて、話は終わったようだな。お休みー」

「待ちなさい兄卑!」

「何だ? 襲われたいのか?」

「そ、そうじゃなくて……ああっ、もう、私の部屋に来なさい!」

「へいへい」


     *


 勢いのままに兄卑を連れてきた私は、昨日の寝間着に着替えていた。

「ほ、ほら……これで満足?(な、何を言ってるのよ私、それは兄卑の言うべき言葉じゃないの)」

「じゃあ、横になれ」

「わ、わかったわよ……(これ、やっぱり怒ってる? それとも、したい、のかな……)」


「この野郎、好き勝手しやがって!」


 兄卑が大きな声を上げると同時に、紐パンツの結び目をほどきにかかる。

「昨日はよくも俺を襲ってくれたな、ああ!?」

 ああ、やっぱり。

 兄卑、立派なケダモノになってた。

「エロい服で俺を誘惑したり、かと思えばいきなり顔に水ぶっかけやがって! もう我慢の限界だ、滅茶苦茶にしてやる!」

 ちょ、兄卑、強引すぎっ!

「『私が兄卑を魅了出来る』だって!? ああ魅了されたよ! あんときのお前、滅茶苦茶エロかったよ!」

 え、嘘……!?

「今のお前もそうだ! 体つきは小ぶりなくせして、きっちり俺の心を掴みやがって!」

 えっ、それ、本気で言ってるの……!?

「ああもう、下準備無しでやってやる!」

 えっ……あは、溢れてるぅ…………ひっ!?


 あっ……きたぁあああああっ!


 ゆ、夢じゃないわよね……!? 兄卑が、兄卑が自分から、私を求めて……っ!

 あんっ、嬉しい、っ……!

「あ、兄卑っ」

「何だよ……?」

「ほ、本当に、怒ってない?」

「怒ってたら……こんなこと、するかっての、クソッ!」

「兄卑……っ!」

 気づけば私は、兄卑の体を力いっぱい抱きしめていた。

 兄卑は兄卑で、私を全力でけがしにかかっている。あはっ、お姉様にしていたときみたい、兄卑。

 いいよ、兄卑。

 もっともっと、私を求めて、一心不乱に穢して?


「………………!」


 あっ……!

 何だ、兄卑……ちゃんと私に、誘惑されてたじゃぁないの。

 まだまだ、出来るかしら……?


     *


 それから三時間半後。

 私達はべとべとに汚れながら、一緒のベッドで眠っていた。

「うふふ……兄卑の魔力、いっぱい、もらっちゃった」

 また、一緒に頑張りましょう。私の愛しい兄卑。

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