第2話 斎藤緑雨
本日の名言
「按ずるに筆は一本也、箸は二本也。衆寡敵(しゅうかてき)せずと知るべし。 」
現代語に直訳すると筆は一本です。箸は二本です。数では敵わないと理解しましょうということ。
『筆』とはつまり『言論』のことで、箸とはつまり『日々の生活』のことです。
どんなに立派な理想を語ったところで、今日を生き抜くのせいいっぱいな人々の欲望の前には敵わないといった意味です。言論家の空しさを表した言葉ですね。
(筆一本では、箸二本=毎日の食事にありつくのは困難である→作家は貧乏であるといった解釈もあるようですが)
斎藤緑雨は1868年生まれ、1904年没。明治時代を生きた小説家・評論家です。
皮肉屋・毒舌家・風刺家・アフォリズム(警句、金言、格言)の名人として有名な人物です。
彼の残した名言はいくつかあって、また機会を見て紹介したいと思います。
押井守監督の劇場版アニメ「イノセンス」でも引用された『あの言葉』も緑雨ですね。お楽しみに。
緑雨さん肺結核を患い、晩年は貧しかったようで、こんなエピソードがあります。
『緑雨は、一生不如意な生活をし続けた。その晩年に、金策に苦労しているのを、世話をしていた婦人が見かねて、何かお書きになっては、と勧めたら、人から金を借りたからといって、恥にはならぬ。金が欲しさに、書きたくもない原稿を書くのは、緑雨の名を汚すものだ、といったそうである。』
「緑雨の人物」森銑三著 小出昌洋編『新編 明治人物夜話』(岩波文庫)144ページより引用
ぼやいてはみても、だからといって魂は売らない気骨を感じます。
人から金を借りることは恥ではないとわざわざ言うあたりが皮肉屋らしくてイイですね。
正論が人々の欲の前には無力だと感じても、だからといって皆が筆を捨てて箸を持ってしまえば、世の中は実につまらないものになります。
敵わぬと知りながらも、一本の筆を持ち、世に抗ってみるのも一興です。
今日の(作家向けの)教訓
さぁ、筆を握って書け!箸をおいて、とにかく書け!
悩んだら書け! 悩まなくても書け!
(そればっかりかよ
そればっかりだよ、実際)
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