三月に雨は降り続く――

第32話 三月に雨は降り続く――

しばらくユメを見ない。

 それは現実で夢を見なくなったから?


 分からない。


 いつしか見たユメは現実の中で押し流されて、もう手が届かない。

 ただ、ユメを抱いていた頃の埋まらない喪失感が残るだけ。


 それでも、手を伸ばす。失くしたユメに。

 ユメを見るように。

 見続けるように。

 そうして――他のモノはナニも見ない、掴めない。


 雨が降る。


 降っていて欲しいとすら願う。

 そうすればこの目から流れる滴に気が付くことも、きっとないから。


 身体が冷たくなっていく。


 それでも――


 不意に――その手を取る温もりを覚えた。


 降り続く雨の中で。

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