第20話 エルフと巫女のガールズトーク

「いひひひひ、見て、耳をピコピコ動かしてる」


「あらあら、喉まで鳴らしてらっしゃいますわ」


「あー、「もう可愛い」ですわ!」


「それでいて」


「私達の恩人」


「最高の勇者ね」


「ええ、こんなに小さいお姿にもかかわらず、あの黒き魔女に立ち向かう雄姿、私の心はすでに鷲掴みです。それこそ、ぎゅううっとです」


「ていうか、私は前から、出逢ったときからお見通しだったんだから。旧支配竜族エイシャント・ドラゴンズを追っ払ってくれたときから。……待ちに待った真の勇者の到来だって」


「うふふふ、貴方にとってはそうなんでしょう。でも、私にとっては、私だけの、私だけのために現れた勇者様です。私のためだけに命を投げ打ってくれる私だけの英雄。それだけでも一生を捧げる価値があります」


「ちょ、ちょ、バッカじゃない! 何よ、その屁理屈、詭弁よ! 彼は私のためだけに命をはってくれたんだから」


「あら、貴方はただのおまけでしたわよ」


「それは私の台詞だ!」


「それはどうかしら?」


「そうなのよ!」


「……しぃー、あまり騒ぐと目を覚まされてしまいます。ここは私達が紡いだ彼専用の守護結界です。今はゆっくりと回復していただくとしましょう」


「ふん、それは、私達にも言えることだけどね。体力も聖唱力マジック・ポイントも治さなくちゃ。まさか私達まで世話になるとは思わなかった」


「……フィアット、私はもっと強くなります。@様にお近づきになるために、そして願わくば、お守りするために」


「当然よ! 私だって、こんなザマじゃなかったら、辛気臭い神殿の袂なんかからさっさとおさらばして、より強力な聖霊術を身に付けてるとこよ。……助けられるばっかりなんて、私の性に合わない!」


「うふふ、そうですか」


「そうよ、文句ある、ヒタチ?」


「……いえ、今は」


「……そうね、お互いに身体を休めることが先決ね。それまでは」


「@様をお撫でして待つとしましょう」


「名案だわ、いひひ」


「「ゆっくりおやすみ」ください、「@」様」

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