第16話 ただマタタビが欲しいわけで(エルフとか巫女とか魔女とか関係なく)

「あのー、フィアットさん……」


 @は拘束されたフィアットの傍にとことこと走った。


「何してんの、@! いくら魔女の攻撃が効かないからって!」


「そうです! 黒き魔女を甘く見てはなりません! 私達のことなど気にせず早く!」


「私達を助けるなんてバッカみたいな真似をしないで!」


 うん、そういうことじゃなくてね。


わっぱぁあ、虚無なる魔鎚ビッグ・イナフを受けて尚、操なるとは! 名乗れい!」


「「危な」ませんわ!」


 二人の声を聴くまでもない。@を横凪に払おうをする、漆黒の丸太を屈んでやり過ごす。


「えーと、俺はマタタビをもらいに……」


「そうおっしゃる、お気持ちはありがたいですわ。また三人で旅を続け、いつものように平穏なる夜を過ごしたい。でも……それは」


「ごめん、@。……もうあんたに崇喜花モーニング・グローリィはあげられない。私とヒタチの旅はここで終わるの」


「な、なんですと!?」


「ええ、魔女は最初から聖唱力マジック・ポイントの消耗を狙っていたのです。私達に魔法の無駄打ちをさせるとともに、魔影の力によって、残った聖唱力マジック・ポイントをもは奪われました」


聖唱力マジック・ポイントを回復するにも、あいつに崇喜花モーニング・グローリィを奪われちゃったしね……」


 泣きそうな顔をするフィアット。それよりもその言葉に@はショックを受けた。


「ぬわさ!!」


「答えや、無礼ぞよ!! 妾を見くびるかや!!」


 床から無数の黒い槍が出現し、@の身体を狙う。も、槍の穂先から身体をずらし、そのままころんと転がる。

 そして、神殿の奥をしっかと睨む。


 あそこか、あそこにあるのか。


 その足取りはその強固なる意思のごとく。肉球をぽむりぽむりと鳴らす。

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