第8話 道中、食べ物とか食べないといけないわけで
「@の行き先が私達の生き先だわ!」
と、フィアットが頭の湧いたことを言ったのも前の話、ヒタチも「全ては@様の御心のままに」と抱っこしてくるので、適当に「あっちだよ」「こっちですね」とその日の気分で指示してきたのだが、本来ならば適当なところで
だが、ただこの世界? で
そんなわけで、日々、気ままにヒタチに抱えられて山を越え、谷を越えてきたのだが、食料はとくに心配なかった。ヒタチから朝と夜に干し肉や干し魚をいただいている。フィアットの胸なしは、毎度、変な葉っぱを食べさせようとしてくるが、無視。していると、くるんとうずくまって落ち込んでいるが、@は甘やかさない。マタタビに感づくまで無視。学習しない悪い胸だと思う。
当然、毎日、干し肉などを食べていれば減っていく。キャットフードや猫缶と同じだ。そういうときは、美咲だったらノグチヒデヨを持って、スゥパァで調達してくるのだが、残念ながらここにはスゥパァはないらしい。しかし、時折、道中で通りすがる正常な人間(←襲ってこない)から、ヒタチとフィアットは食べ物をもらっている。その行商人という人種に、ゴルドンという、五百円玉よりも大きく、五円玉よりも黄色な謎の物体と交換している。美咲も五百円玉やフクザワユチキなど大事にしていたから、それと同じなのだろう。人間というものは食べられないモノに価値を見いだす、まこと奇っ怪な生き物だ。どこでも。
しかし、ちょうど食料が尽きかけそうなときに行商人とやらがあまりにタイミングよくいるので、ヒタチに訊いたら「んふ、彼らもお互いの商売の邪魔しないように、適度に距離をとりあっているのです」と言う。
「あいつら
フィアットにしては上出来なことを付け加えたので、後で撫でさせてやろうと思う。なるほど、行商人とやらはゴルドンを得るために、お互い牽制しあって、それでいてそれぞれがもっとも利益を得る場所にいるわけだ。猫並の合理性に@も納得する。
そして、最後の行商人と会って、数日。もうそろそろ、食料もなくなる頃だ。
撫でさせてやったら、最近調子に乗り始めたフィアットがほざいた。
「今夜は街だかんね! @にあったかい野菜スープを食べさせてあげる! 干し肉や干し魚だけじゃ、精霊力も回復しないんだから!」
これだから、そんな貧弱な胸になるのだ。猫舌をバカにするのも大概になさい。と、思ったが言わなかった。
「今日は
やはりフィアットは汚い。そんなことを言われてしまったら、逆らえないではないか。
「うん、まあ、それはありがとう」
と冷静に辛うじて応えたつもりだったが、しっぽをピコピコ揺らしてしまった。
ヒタチはいつものようにニコニコと微笑んでいる。ならば結果オーライ。彼女のふっくらした胸に鼻先をうずめると寝ることにした。やることないし。
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