蟻A(遠距離、ギター、蟻)
青空の下、誰もいない広場のベンチで一人ギター片手に日光浴。
絃を一本だけ鳴らしてみたり、ただ弾いている風に構えてみたり。
平日の昼にこんなことをしている大人は俺だけだろうか。他にたくさんいたら、それはそれで問題ではあるな。。一人で十分だ。
決して無職ではない。無職っぽいけど。これでも店のオーナーだったりなかったり。一つ言えることは今現在サボリの真っ最中であるということ。良い子はマネしないように。
さて、そろそろ仕事に戻ろうか、という気にならず。
地面の蟻でも見つめよう。巣では忙しく出たり入ったりが行われている。同じ個体がうろうろしているだけだったりして。忙しい振りの可能性もある。
巣から勢いよく出てきた蟻、仮にAと名付けたそれはどんどん遠くへ歩いて行く。もしかしたら走っているのかもしれない。
進んでいくのをベンチから見守っていたが、とうとう座ったままでは見えにくい距離まで行ってしまい、俺は立ち上がることになった。追いかけていくと、五メートル程行き、おぉすごいと思ったのだが、どうやらまだ進むようだ。
何の危機もなく歩き続けるAは働き者。まぁ働き蟻っていうし。
特に他に考え事もせずAを見守っていた俺は驚いた。ベンチが遠い。これは三十メートル程来てしまったのではないか? Aはそんな長距離まで行くのか。しかもまだ先へ行こうとしている。俺は蟻を軽く見ていたが、実はとんでもない奴だった。
感心している場合ではない。俺はベンチにギターを置いてきてしまったのだ。Aに別れを告げ、取りに行こう。さようならA。
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