違うもの(モンブラン、星、パイン)


「モンブランってさ」


 今日も何か言い出す。きっとおかしなことだろう。


「普通のと、チョコといちごとかかぼちゃは見るんだけど、他ってある?」


 思ったより普通のことだったな。


「そうだね、他はすぐには出てこないなぁ」

「えっ、それ? っていうものを見つけたいと思うの。分かる?」


 分からない。


「新しいのが食べたいってこと?」

「そう、食べたい。見つけたい、作りたい」


 作りたいというのは。


「ネットで探してみようか」

「なんで?」


 ネットで探せば一発、歩き回ったりなんだりしなくてすむ。と思ったのに、まさかのなんでとは。


「すぐ見つかるでしょ」

「どうしてすぐ見つけなきゃいけないの」


 そもそもの考え方が違う。そうだね、この人何でもすぐ行動するタイプで家にいるって選択肢ないもんね。


「で、でもさ。この辺近くにはあまりケーキ屋さんないし、調べたほうが良いよ、ね」


 眉間に皺を寄せる彼女。


「んー、んー、そう? んー?」


 もう少しでこっちに向くぞ。


「そうかなぁ。そうなのかなぁ。でもなぁ」

「よし、ほら調べよう」


 スマホを持ち、ネットを選び、ケーキモンブランと検索。


 出てはくるが変わったものはない。


「あった?」

「もうちょい待ってー」


 探さなきゃ。見つけなきゃ。ないなんて、嫌な予感がする。


「まだー」


 出ない、出ない。


「もうちょっとだから」


 オーダーケーキという文字が飛び込んできた。


「オーダーだって」


 よくある種類のケーキと味の組み合わせで作る新しいケーキ。星のケーキ屋さん。


 画面をのぞきこんでくる彼女。


「星のケーキ?」


 星のケーキ。星の組み合わせにより、さまざまな星座が出来るということから。


 土台と味を星としたのか。


「モンブラン作れる?」

「うん、載ってるから大丈夫だよ」


 じゃあね、じゃあねーと考え出す。


「栗」


 それ普通のだし。


「あ、それふつーのか」


 自分で気付いた。


「桃」

「桃は前違うのに使ったでしょ」


 忘れもしない無茶ぶり。


「じゃあ、パイン」


 パインか、確かに面白そうではある。


「モンブランとパインでオーダーするよ」

「はーい」


 今日は無事に家の中で終えることが出来た。


「よかったね」


 その後、メールが来てて完成予定は二ヵ月後以降だった。そうだよね、時間かかるさ。彼女には言わないでおこう……。

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