自慢の子(天使、チェス、星座)


 ずっと思っていたことがある。それは、俺の彼女って可愛くない? 天使と言っても良いんじゃない? ということである。たまに無茶なことは言うし、どこの王族だってくらいの態度の時もあるけれど。それでも天使と思える不思議。


「おーい、ぼーっとしてどうしたの?」


 気付けば彼女に心配されるほど考えていたらしい。


「いや、大丈夫。ちょっと考え事をしてただけ」


 まさか自分のことを考えられているとは思わないだろう。


「暇なら遊ぼうよ。何する?」


 まだ良いとは言っていない。


「私、なんか頭良さそうな遊びがしたい」


 こりゃまた無茶ぶり。


「家にはそんな物無いよ」


「頭使うゲーム……。オセロとか。いやぁ、もっともっと素敵な物があるはず、ねっ?」


 ねって言われても困るんだが。


「そうだねぇ、あぁ将棋とか」


 少し考える彼女。


「もっと外国っぽいのが良い。和じゃないので」


 難題。


「チェスぐらいしか思いつかないな」


 目を輝かせる様子を見ることが出来た。


「それだー」


 いそいそと上着を着始める彼女。


「何処か行くの?」


 驚いた顔をしてこちらを見てくる。


「行くんだよ。チェス買いに」


 只今、夕方五時である。


「もうこんな時間だし、明日にしよう? そうしよう?」


 頬を膨らませた彼女はこう答える。


「嫌だ。今日やりたいんだもん。今日やるなら、今買いに行かなきゃじゃん?」


 これは行くしかないようだ。


 仕度をしておもちゃ屋に向かう。


 たくさんのおもちゃを見る彼女は、どうやら目移りしているようだ。


「チェス見に来たんでしょ。それ見て一つ選んで帰ろうね」


 いやいやと駄々をこねる。余計な物買わなきゃいいけど。


 少し別の所に行こう。それで戻ってきたら終わっているだろう。


 そして僕は戻ってきた。予想はしていた。でもそれほどまでか。彼女はチェスはもちろん、オセロや将棋、その他よく分からない物を持っていた。


 とりあえず、それらを彼女から取り上げて元の場所に戻す。やだやだと言う声は無視して、チェスのみ持たせてレジへ連れていく。お会計を済ませ、ブーブー言う彼女と家へ帰る。


 家に着くとようやく大人しくなった。


 箱を開け、説明書通りに駒を並べる。さて、やろうとしたが、やり方知らなくない?


「やり方知ってるの?」


「私は知らない!」


 こんなにも振り回されて、疲れて、やり方も分からないという状況。


 それなのに、知らないと言った彼女のこの笑顔。これは天使、どんな疲れも癒す最高の笑顔。星座にして今後残しておきたい笑顔だ。



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