小さな世界(コンセント、海、亀)


 光が射して水面がきらきら光っている。水中から見た水面も輝いているのだろう。


 他の生き物は無く、ただ一人ゆらゆら揺れる水面から顔をのぞかせている。眩しいのか目を細めてじっとしている。思い立ったか、のしのし動き出し岩に上がる。たまには全身で日光を浴びようと思ったのか。時間になると空から降ってきて水面に浮く物を美味しいなと感じながら食べては寝る。


 そんなゆっくりとした時が流れるこの小さな世界の作り方はとても簡単だ。水槽を用意し、岩を入れる。エアーポンプをセットし、水を適量入れ、ポンプをコンセントにつなぐ。水に水質を良くする液体を入れたら、彼が住む小さな世界の完成だ。


 ここにこの海の主である亀さんを招く。これでこの世界は完璧だ。


 彼にもそろそろ彼女をと思うのだが、なかなか良い子が見つからない。私が決めても、彼がどう思うかは別であるが、とにかく私が良いと思うことが前提だ。


 この世界にもう一人、と私は考えているがそもそも彼は他を求めているのかどうか。寂しいのか楽なのか、はたまた何も思っていないか。難しいところである。


 私が考えているのはこうあるが、私が望むことはこの小さな世界で彼が幸せに過ごしてくれることだけである。



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