sweet(チョコレート、砂糖、桃)


「私は甘いものが食べたい。家で簡単の頂点みたいなもの。そしてこれは贅沢というようなものがいいの」


 いきなり言われても、というような難題である。そもそも簡単と贅沢は一緒になるんだろうか。


「何かもっと具体的にないの?」


 彼女は少し考えた後、「桃」と答えた。それ以外にはないのか。


「甘いに甘いを重ねた感じでお願いします」


 用意するのも僕なのかな、これは。案を出すだけじゃないという。甘いに甘いをねぇ。桃と合わせられる甘い物かぁ。


「普通にチョコレートは駄目なの?」


 また考え出す。そしてにやりと笑う。


「もう一声」


 これ以上何を足すというのだ。そうだなぁ。甘いといったら砂糖か? そのままかけちゃったらすごいことになっちゃうし。


「ドーン、デーン! みたいなのがいい」


 すごい要望。存在感ってことなのかな。


「ドーン、デーン。って言われても。まるごと使うしかないんじゃない?

「いいねぇ、いいですねぇ」


 にやにやしている。お気に召したようだ。


 砂糖っていうと、飴作れるっけ。桃で飴、チョコレート、まるごと。これだと、まるごとの桃にチョコレートかけて、飴でコーティングするってことになってしまう。一応聞いてみようか。


 僕はそのまま説明する。


 彼女は目を輝かす。


「何それ、見たことない。出来るの? 出来ちゃうの?」


 水分多いけど大丈夫だろうか。メロンも出来るみたいだしどうにかなるかな。



 材料を買いに行き、余計なお菓子まで買って帰った。彼女がぽんぽんカゴにいれるからこんなことに……。


 チョコを溶かしたりとやっていき、試行錯誤の結果、とんでもないものが出来上がった。存在感に贅沢感、甘味。全てあるんじゃないだろうか。


 彼女に見せる。


 うほ、うほほ、うひゃ、と変な声を出している。良かったらしい。


「た、た、食べてもいい?」


 興奮冷めやらぬまま、僕の「いいよ」でかじりついた。


 バリバリ、ボリボリ。


 雨が破壊されていく音が響き渡る。怪獣か何かに見えてきた。


 無理難題とは思ったけど、嬉しそうな顔が見れたから良しとしよう。


 でももうやめてほしい。


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