とある一日(糸、ドラム、ハンバーグ)
「今日のご飯は何?」
そう聞いてくるのは私の彼。丸めなボディにつやつやとした肌と少し長めの髪に太めの腕。
「今日はハンバーグだよ」
ハンバーグと聞くと子供のように飛び跳ねて喜んだ。お腹がぼよよんと揺れている。
「目玉焼きつく?」
目を輝かせて彼は聞いてきた。
「つかないよ」
輝いていた瞳には影がかかり、肩を落としている。
「そのかわり、チーズが上にのるよ」
影がかかっていた瞳には光が差し、喜びで腕を上げぴょんぴょんと跳ねている。お腹はまたぼよよんと揺れている。
夜ご飯にはまだ早いこの時間からそんなにうきうきして疲れないんだろうか。
「まだ時間あるし、散歩でも行く?」
彼はお腹をさすりながら、うーんと悩んだ後「行く」とだけ返事をした。
外に出て近所を歩いていると、散歩中の犬と遭遇する。大きい子から小さい子。歩きたくないと駄々をこねる子もいて面白い。公園に着くと、子供達が帰り仕度を始めている。
「みんなで片付けして偉いよねー」
「俺はしてるふりして、何にもしないタイプだったなぁ」
こんな話をしながら住宅街へと歩いていく。遠くから魚を焼いている匂いやカレーの匂いが漂ってくる。そして近くから、ぐぅと音が鳴っている。
「お腹空いた?」
「うん」
私達は家へと歩く方向を変えた。
帰ってきた私はすぐに夜ご飯の仕度にとりかかる。彼はというと、布と糸でちまちま何かを製作している。
「何作ってるの?」
肉を捏ねながら聞いた。
「ドラムだよ。やっぱり俺ドラマーだし、ライブの物販はドラムマスコットかなぁって思って」
そう彼はバンドのドラム担当だ。太めの腕もそのためである。職業バンドマンの彼は、物販に力を入れているらしい。
「そうなんだ。本当器用だねぇ」
これでも売り上げはそこそこあるからすごい。前は、メンバー全員のマスコットだった。マスコット好きなのかな。
「そろそろハンバーグ出来るよー」
「はーい」
私と彼のとある一日である。
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