町田さんの好きなもの(うどん、マカロン、エスカレーター)
「私、マカロン好きなの」
そう言うと、スクールバッグからマカロンを出して食べ始めた。
隣の席の町田さんはどうやらマカロンが好きらしい。確かに休み時間によく食べている。授業中に教科書を立ててそれに隠れて食べているときもある。
よく見つからないなぁと毎回思っているけれど、止めるべきなんだろうか。
「いつも食べてるもんね」
僕の返しが悪かったのだろうか。町田さんはきょとんとしている。ただ、マカロンは食べ続けていた。その表情で食べているというのがなんだかおかしい。
そういえばお昼もマカロンなんだろうか。
「お昼ご飯もマカロンなの?」
さっきまでのきょとん顔から一変、よくぞ聞いてくれましたとばかりに手に力が入っている。マカロンが潰れそうだ。
「お昼は名前の通り、うどん」
僕らの学校に食堂はない。コンビニ弁当的なものなのか。そもそも名前の通りってなんだろう?
「買ってきてるやつだよね? どこのがおいしいの?」
なんで驚いた顔をしてるんだろう。
「お弁当を買ってきてるわけないでしょ。名前に誓って。ちゃんと産地とか打ち方とか工夫してるんだから」
そうだった。町田さんの下の名前、小麦だった。産地や打ち方にこだわり……。
「もしかして、家で自分で作ってきてるの? うどんを」
「もちろん」
学校のお弁当がうどんで、しかも自分でうどん打ってる子がいていいのかな。駄目とかそういう意味ではもちろんなくて、なんというか。
「ちなみに、こうやって持ってきてるの」
見せてくれたのは、普通にお弁当箱が包まさっているのかなと思うようなもの。中はというと、ざるそばならぬざるうどんだった。
いや、お弁当としてはおかしいでしょ!
「出汁につけて食べるんだけど、この出汁もこだわっててね。。温かいほうがいいから保温容器に入れてあるし」
この後、休み時間いっぱいうどんの話をされた。
うどんの話を聞いてから、町田さんは毎日うどんを持って登校してるのかぁと思いながら登校していると、駅で町田さんを見つけた。声をかけようか迷っていると、町田さんはエスカレーターに乗り、何段か上ったところで引っかかり、盛大にうどんをぶちまけた。
これは声をかけよう。僕が近付いていったとき、町田さんは恥ずかしさより、食べれなくなったうどんを嘆いていた。
そういえば、名前の通りってうどんじゃなくてパンでもいいよなぁ。
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