僕と彼女とキウイと(キウイ、縄、からあげ)

「からあげが食べたい」


 寝転がって、へそが出ている腹をかきながら彼女はそう言った。


「え?」

「いや、だからさ。か・ら・あ・げ!」


 からあげ食べたーいーと駄々をこねているぐーたら人間もとい彼女。春になってきて暖かいからと半袖で過ごしている。まだ外には雪が残っているというのに。


「あー、あとね。あのおばちゃんが来てね」


 さっきとは違う話をし始めた。


「おばちゃんって、あのゴミ捨て場で監視してる、しきりたがりのおばちゃんのことだよ。それで、来たんだけどキウイくれた」


 彼女が寝転がったまま指差した方向を見ると、原稿用紙程の大きさで高さ15cmはある箱があった。箱を覗くと、閉じないくらいにキウイが入っていた。


「え! どうすんのこれ?」

「んー? 食べればいいんじゃない? あとからあげね。今日のご飯はからあげで、デザートはキウイに決定」


 彼女は言いながらごろんと起き上がって僕の方を見た。その目には言って、決まったことは変えないという意思の光が宿っている。


「はいはい、分かったよ。この量のキウイ食べきれるのかな。あ、あとどうしてキウイくれたの?」

「知らなーい」

 

テレビをつけた彼女はこちらを見ずに答えた。作る気もないらしい。


「そうだ。鶏肉買ってきてよ。500gくらいでいから」


 千円札を握らせ、立ち上がらせる。嫌な顔をしながら着替えた彼女を見送り、部屋には僕一人になった。一人になったところでごろごろするわけでもなく、夕食の仕度を始める。鶏肉はまだないから、漬けておくタレを作って、キウイをすりおろしてそのタレと混ぜておく。


 キウイは肉を軟らかくするのにも使うのが消費には良い。デザート用にももう切っておいて、あとでジュースも作ろうかな。これでもまだまだキウイはある。


 なんだかんだとしていると、彼女が帰ってきた。自信満々な顔で袋を渡してきた。中には鶏肉が入っていたが、量が頼んだ倍だった。褒めてと言いたげにしている彼女に、これについて聞くと。


「二人分あるかどうかぐらいしかないと思ったから、多めに買ったんだ! 良くできた彼女だろう。さぁ褒めて!」

「これ全部使ったら六人分だけど」

 

 さっきまでの自信はいったいどこにいったのか、六人分と呟きながら肩を落として寝転がっていた場所までいき、不貞寝をすると宣言して眠ってしまった。

 それを横目に鶏肉を切り、タレに漬けておく。

 

 その後、不貞寝中の彼女の近くにいったのだがそのまま一緒に寝てしまったらしい。すぐに夕食の準備を始めよう。片栗粉をつけて肉を揚げる。なんと二度揚げをする。時間はかかるがこのやり方が気に入っているから、毎回やっている。半分程揚げたところで彼女が起きてきた。


「おー、おいしそうだー。どれどれ一口……いたっ」


 つまみぐいをしようとした手をパチンと叩く。


「もー、大人しく待ってればいいんでしょ。分かったよ」


 席に着くなり、「からあげからあげ!」とうるさい。途中で自作のからあげの歌までうたいだした。そんな中で揚げ終わり、皿に盛って他の物と一緒にだす。


「はい、出来たから食べるよ。いただきます」

「いっただきまーす」


 彼女はうまうま言いながら食べている。僕は黙って食べていた。少しするとキウイの話になった。


「デザートのキウイ用意してくれた?」

「うん。ジュースも作ろうと思ってるよ」

「やっほーい。そんだけ使えばすぐなくなりそうじゃん」

「そうでもないよ。まだいっぱいある。からあげにも使ったのに」


 目を丸くする彼女。


「これのどこにキウイ要素があると言うんだね!」

「肉を漬けたタレの中にすりおろしたのが入ってたんだよ。軟らかくなるしいいよね」

「なんだってー。すごい才能をキウイは持っていたのか」


 やべーなキウイと褒める彼女は目をきらきらさせていた。


「あと何日キウイがデザートかなぁ」

「さぁ? どうだろうねぇ」


 デザートまで食べ終えてのんびりしている時に、突然彼女が叫んだ。


「キウイ! 干そう。乾燥させるあの、あれだ、ドライフルーツ!」


 突拍子もないことを言った。


 とりあえず、どうやって干すのか聞いたら「吊るす」と返ってきたが、どうやってかと聞くと「縄?」と返してきた。

 彼女のやりたいようにやったら、とんでもないことになってしまう。

 

 これで夜中の予定は決まってしまった。

 

     キウイ ドライフルーツ 干し方

 

 これで検索だ。





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