第33話4回戦のリサーチとその他
犬馬のり子の家。宮岸夫妻は出張で、息子はすでに学校に行ってしまっている。わか子ちゃんはずっと会長のところに居るので、今この家には俺しか居無い。
「うっし、・・」
ポップコーンを3袋程空けてお腹が膨れたので、わか子ちゃんの部屋に置いてあるパソコンで次の対戦相手(2つの高校の内、勝った方が対戦相手)を検索している。
「どれどれ・・っと」
アプリ坊主高校大会ホームページからリンクを辿って各高校へとジャンプする
私立サバンナ学園(しりつさばんながくえん)
大地めぐみ(だいちめぐみ)
能力は「自然で生き抜く力」
雨宮スコール(あまみやすこーる)(支援アプリ坊主)
「ぶっ・・!!」
「サバンナって・・・」
グラウンドとか広そうな感じだな。逆に狭かったら笑えるけど。
「っと、」
もう一つの高校を検索する。この高校と戦う奴だ。
梵酢高校(ぼんずこうこう)
茄子乃(なすの) 甘美(あまみ)
能力は「野菜アイスクリームを人に食べさせる」
葱沼(ねぎぬま) 俊介(しゅんすけ)(支援アプリ坊主)
「野菜アイスクリーム・・・?」
う~ん、なんだろう。危険な香りしかしない。野菜アイス・・・・
「ええっと、次は・・っと・・」
続いて、各高校の個人成績もチェックする。一騎打ち戦などの情報は重要だ。
「ぴろりろん♪」
ん?ズボンの中の携帯(アプリ坊主端末では無い普通の携帯)が鳴っている。
「・・・」
画面には「会長」と表示されている。どうしたんだこんな朝早く・・・いや、早くも無いか。
「あ~、はい、もしもし」
電話マークを押し、携帯に出る
「ああ、珍海君??」
女性の声だ。
「すいません間違えました。」
謝罪してから電源ボタンを押して会話を終了させた。。
「・・・・ん?待てよ」
こっちの名前、解ってたな。というかそもそも携帯電話なんだから間違いもなにもないか。
「ぴろりろん♪」
再び呼び出し音が鳴る
「すいません、間違えて切っちゃいました」
とりあえずもっかい謝っておこう。
「あはは・・」
「私は会長の従者を務めている町田(まちだ)と申します。」
ああ、従者の人ね。なるほど
「ああはい、(会長には)お世話になってます」
「会長の電話から(他の人が掛けて来る)なんて珍しい。」
「どうしたんですか一体?」
風邪でも引いたのだろうか?
「ああ、いえ、会長は今体調を崩してまして・・」
「変わりに私が連絡した次第です」
町田さんはゆっくりとした口調で告げた
「あらら・・」
「・・それはお大事に」
本当に風邪か。
「それでですね、会長からメッセージを預かっているんですが」
「今、犬馬様とご一緒では無いんでしょうか?」
用事があるのは犬馬のほうか・・。あいつ今移動中だろうから、呼び出しに気づかなかったのかもな。
「ああ、犬馬ならさっきコンビニに出かけたよ」
「って、結構遅いな。」
はっきりとした時間は覚えていないが、既に4~50分は経過している。
「・・・・左様でございますか。」
「ではまた後ほどご連絡致します」
町田さんははそう言って携帯を切った。
「まったく、犬馬・・」
どこで道草食ってるんだ。もう。
「ただいま・・」
「・・・遅くなってごめんね」
結局この日、犬馬が帰って来たのは辺りが完全に暗くなってからだった。涙だろうか?目の周りを腫らしていた彼女は出迎えた俺に軽く謝ると玄関からまっすぐシャワールームに向かい、
小一時間程でリビングルームに再び姿を現した。もう寝るらしく、パジャマ姿だ。・・・・。
「どこ行ってたんだ犬馬、心配したぞ」
「せめておまえ、携帯ぐらいは電源いれておけよ」
何度も携帯に掛けたが繋らなかった
「うーうん・・・・」
「ごめん・・」
犬馬はそのまま冷蔵庫に向かい、コップに牛乳を注ぐと一口飲んだ
「今日ちょっと疲れちゃったから・・」
「明日また話すよ・・」
ぐったりした表情の犬馬は飲みかけのコップをこちらに差し出すと
「・・」
「ごめん珍海、おやすみ」
開きっぱなしのリビングのドアを閉めて、自分の部屋がある2階に行ってしまった
「ああうん、おやすみ・・」
一体全体どうしてしまったのか。コンビニでなにかあったのか。
「・・・・」
コップを洗い終えた俺は「そっとしておいたほうが良いだろう」と思い、なるべく静かに犬馬の部屋に入り、そのまま床で就寝に至った。明日、明日聞こう。
※ 宮岸 聡(みやぎし さとし) 君は既に帰宅しています。話を簡潔にするため省略しました。
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