第26話 漆黒のカレー
「うわ、すごい色ですねそれ」
会長が頼んだイカ墨カレーは、黒々としていて上にイカリングやらホタテやらがトッピングされていた
「おいしそうだろう?ふふ・・」
「うわっ・・辛っ・・!!」
「はふー!はふー!」
辛い辛い言いながらカレーを頬張る会長。隣の黒服も護衛とかそんなのを忘れてがつがつ食べている
「いただきまぁす・・」
運ばれてきたポテトサラダをつっつく
「どうだね?」
会長が聞いてきた
「いえ、あの・・おいしいです」
・・・・あ、違うか?俺はとっさに
「とてもいい試合だったと思います」
言い直した
「うむ。素晴らしい試合だったな」
「お~辛っ!!はふっ!!はふっ!!」
言い直して正解だったようだ。
「相手の目が封じられたとみるや、すぐさま「辛さ10倍増し粉」をいれこみ・・」
「そして、そこからの不意打ちのTENGOによる強襲。」
「最後は、相手の放出したオーラを自ら受けに行く俊敏さ・・・」
「完璧な流れだったと思います」
手元のポテトサラダを頬張りながら自分の意見を述べた。我ながら的確な分析だと思う。
「・・勝てそうかね?」
会長が尋ねてくる
「・・・解りません」
「ただ・・」
ただ、マサラの能力である「辛いものを食べる能力」にも隙はあるはずだ
「うちらも「能力あわせ戦」をしたいと思います」
会長に宣言した
「うむ・・」
「いろいろ経験を積んで置くのもよかろう・・」
イカ墨カレーを食べながら、満足そうな表情を浮かべる会長
その後、食べ終えたうちらは、同じ店に居たはずのマサラ達とは特に絡む要素も無く帰路に着いた。会長に「犬馬の家まで送っていって欲しい」と頼み、
今、玄関先まで送ってきてもらった所だ
「では、またな」
会長はリムジン?に乗っかって帰っていき、
「それでは」
さっきカレー屋まで乗っけてってくれた運転手もワゴン車でその後に続いた
「わんわんっ!」
犬小屋に繋がれている「まゆげ」が尻尾を振っている
「お~よしよし」
しゃがんで抱きつくようにして頭を撫でてやると
「くぅ~ん・・」
少し甘えたような声で鳴いた
「ピンポーン♪」
玄関のチャイムを鳴らす。犬馬の家には、高校入学・・・いや、高校アプリ坊主として入部して以来、いりびたっているが、それでも一応
「(よその)人の家」であることには変わりは無い。
「うーん・・」
「・・・・・」
あいつ、いねえのかな?今日、学校休んだはずだけど・・端末でも呼び出してみたが、やはり反応が無い。
「ジャリジャリ・・」
合鍵を渡されているのでそれで入るとしよう
「・・犬馬ー?」
そろりそろりとドアを開けると、いい匂いがしてきた。そういや、そろそろ昼飯時だ
「あっ、珍海」
「いらっしゃ~い♪」
キッチンに行くと、犬馬がエプロン姿でなにやら調理していた
「いや、おまえ、端末ぐらい手元に置いとけよ・・」
って、言ってて気づいた。俺もしょっちゅうやらかすわ。人のこと言えないです。ハイ。
「犬馬、次の試合の打ち合わせをだな・・」
「・・・って、カレーか、この香りは」
気づいてみれば、カレー以外のなにものでもない香りだ
「ああ、うん。」
「なんかさっき、会長から連絡があって、カレー屋に誘われたんだけど」
「(行くのを)断ったんだけどさー」
犬馬がカレーの鍋をかき混ぜながら、
「しばらくしたら、食べたくなっちゃって・・」
苦笑いを浮かべた。
「安心してくれ、代わりに俺が食ってきたよ」
自慢気に言い放ってみよう
「ええ~?いいな~!!」
「私も行けば良かった・・」
犬馬は目をうるうるさせながら悔しがった
「・・・・ポテトサラダ食ってきた」
「・・・ていうか、それしか食ってない」
ホント、試合見て帰ってきた感じだな
「ええ~?なにそれ~!?」
「もったいなぁい~」
再びカレー鍋をかき混ぜる犬馬
「そういや、宮岸さん達、今いないんだってな」
イスを引き出し、おもむろに座る
「ああ、うん?」
火を止めた犬馬は
「言わなかったっけ?」
エプロンを空いているイスにかけると食器棚から皿を2枚取り出した
「いや、聞いてないよ」
「少しでいいよ、ありがとう」
次の試合の計画を練ろう。えっと・・端末・・端末・・。
「おまたせ~♪」
犬馬がテーブルにカレーを持ってきた。
「なんすか?そのどす黒いカレーは?」
さきほど見た、イカ墨カレーみたいに見えるが・・
「ん?これ?」
「黒カレーっていうの。この前(スーパーで)見たときになんとなく食べてみたくなって」
「買っちゃったんだ♪」
犬馬はカレーを口に運びながらさらっと答えた
「もう~誘われたとき素直に行っとけよ~」
「それでさ、次の試合だけどさ・・」
俺は漆黒のカレーを食べながら、次の試合に向けての打ち合わせをすることにした
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