第25話剛田番子のド根性
会長がカレーの注文をしている頃、カウンター席では4人のアプリ坊主達が戦っていた。
左から1番目、2番目に、熱来高校
束少マサラ(能力者)、水無瀬 行く年来る年(支援アプリ坊主)、
左から3番目と4番目に、勘鷹高校
剛田 番子(能力者)、鎌田 愛次(支援アプリ坊主)
「い・・・いただきまぁす・・」
列の一番右側に位置する鎌田は、端末を自分のテーブルの左に置くと、恐る恐るカレーを口に運んだ
「ふぁっ!!!」
「ば、ばうーーーーー!!」
辛さのあまり、声を挙げる鎌田
「ばっ・・・!」
「おまっ・・!!」
「・・・・」
パートナーの剛田の顔に焦りの色が浮かぶ。だが、どうやらポイントの減算は行なわれていないようだ。ハンデが効いているのかも知れない
「ふふふ・・」
列の一番左側の熱来高校、マサラは余裕の表情だ
「くんくん・・」
激辛カレーの香りを堪能するように、顔を近づけて嗅いでまわる。
「もしゃもしゃ・・」
マサラの相棒の水無瀬がカレーを食べる。辛さを堪能する素晴らしい連携攻撃だ。
「くっ・・・!!」
焦った剛田は、マサラの真似をして、皿に顔を近づける。基本的に「能力あわせ戦」では、本来の能力者と同じ行動をすれば有利なポイントが付く。
「・・・すぅ~~」
「ぼほっ!!!!」
「げほっ!げほっ!!」
だが、さきほどぶちまけた「辛さ10倍増し粉」を吸い込んでしまい、苦悶の表情を浮かべる剛田
「がっ・・・!!」
「目がぁぁぁあぁ!!!」
勢い余って、目にも入ってしまったようだ。
「・・・ハァハァ・・」
「・・・なんの、これしき!!!」
「ド根性ぅぅううーーー!!」
剛田は、持ち味のド根性で切り抜けると、目を閉じたまま涙を流し、
「ばくばくばくばく!!」
カレーを食べ始めた。心でカレーを観る。心眼の構えだ
(今だ!!)
豪田の左に座っていた水無瀬は、ここぞとばかりに「辛さ10倍増し粉」を豪田の皿にぶちまけると
「ほいっ」
マサラが、バケツリレーのようにもう一本渡す。水無瀬がすかさずぶちまける。剛田が自分で入れた分を含めると、3本分の「辛さ10倍増し粉」
がひとつの皿に集中することとなった。剛田が目をつぶりながら食べているのを見抜いた、素晴らしいカウンター攻撃だ。
「むおっ!??」
「ぬ”っっーー!!」
粉の山と化したカレー皿を、ひとくちスプーンですくって食べた剛田は
「ばふっっ!!!」
白目をむきながら、粉皿に顔をうずめた。粉塵が周囲に撒き散る。
「剛田さん!!剛田さんっ!」
「げほっ!!げほっ!!」
敗北必死の状態で、剛田のパートナーである鎌田が必死に(気絶から)呼び起こす。鎌田も目にキていたらしく、涙を流している
「かくなるうえは――」
もうもうと巻き上がる粉塵の中で、鎌田はズボンとパンツを一緒にずり下げると、
「アプリ坊主ぅぅうーー!!」
TENGOを取り出し「アプリ坊主」へと、変身する。だがその瞬間――
「MEN(めん)ーー!」
熱来高校のアプリ坊主である水無瀬のTENGOが、勢い良く鎌田のTENGOを捉えた。完全に油断していたのだ
「がっ・・・・・・!!」
「あっあっ!!!」
よろよろと歩きながら、オーラ放出を必死で我慢する鎌田。だが、
「MEN(めん)ーー!」
「MEN(めん)ーー!」
執拗な水無瀬の攻撃の前に
「うっ・・うっ・・」
思わず自らのTENGOを押さえて、前かがみになる鎌田。一見、防御手段として優れているように見えるがアプリ坊主の試合においては、
「無気力試合」と判断され、ポイントはぐんぐんと減っていく。さらに、
「突きぃいいぃ!!」
大技が決まった。これは一騎打ち戦の説明には無かったが、「相手が股間のTENGOを押さえている場合のみ」有効となる技だ。
お尻の割れ目付近に、TENGOを滑り込ませると成立する。
「うっ・・うっ・・」
「ヴッーーーー!!」
もう鎌田は限界のようだ
「ポコチン!!ポコチン!!ポコチーーン!!」
けたたましい効果音と供に、紫色のオーラを放出する鎌田。その半分は虚空に消え、残りの半分は対戦相手であるはずのマサラに吸収されてしまった
「お、カレーの味するじゃん♪」
浴びるような姿勢で型膝をついて待機していたマサラ。すっくと立ち上がると顔面に付着したオーラを手ですくい「ペロリ」と舐めた
「・・・・・」
「ドサッ!!」
鎌田はへなへなと膝をつくとその場に倒れこんだ
「決着ーーーー!」
「敗者、勘鷹高校」
先程鎌田の置いた端末から、敗北の知らせが響く。同時に
「勝利!!」
「勝者、熱来高校」
熱来高校側の、マサラの座っていた席付近から、端末越しに勝利のボイスが流れる
「ワァァァァ!!!!」
「ドゴォォォォ!!」
「パオーーーン!!!」
後ろで見守っていた観客達から沸きあがる歓声に、釣られるようにして実況アナウンサーも絶叫する
「それでは本日のヒーローインタビューです」
実況は「一騎打ち」に成功した熱来高校の水無瀬に詰め寄ると予備のマイクを差し出した
「ぃぇ・・・」
最初は音を拾いきれていないせいか、水無瀬の声は小さかった
「・・いえ、」
「ありがとうございます」
マイクのスイッチが入ると、珍海らが見ていた端末からも大音量が響く
「本日は、熱来高校の水無瀬選手にお越しいただきました!!」
実況が興奮交じりで宣言する
「ありがとうございます・・あの・・」
インタビューに慣れていないせいか、同じ言葉を連呼する水無瀬
「見事なMEN(めん)でした!!」
手持ちの端末の回想VTRを見ながら実況が祝う
「あの・・・カレー食べてていっすか??」
激戦でそれどころではなかった水無瀬が再びカレーを食べ始める
「・・・」
「・・・・・」
「・・・そうだ」
しばらく考え込んだ実況は、マサラの席に向かった
「そうだとか言うな。」
「今、カレー食べてるじゃんよ」
マサラはカレーのスプーンをくいっと実況のほうに向けると、軽く牽制した
「・・・・」
「以上、本日のヒーローインタビューでしたぁぁぁぁ!!!」
強引に〆に入った実況はガッツポーズをすると、テレビクルーと一緒にカレー屋を出て行った
「パチパチパチパチ!!」
「ワーワー!!」
見守っていた観客達は、拍手やら声援やらを飛ばすと、各々、カレーを食べたり店を出たりして、程なくしてカレー屋は通常の営業形態へと戻っていった。
「おまたせしました」
「ポテトサラダでございます」
「・・こちらがイカ墨カレー辛さ5倍でございます」
その頃、店の奥では店員が「老人と黒服と学生」の座ったテーブルに次々と料理を運んでいた
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