第24話 熱来高校VS勘鷹高校

ここのカレー屋は、同じ敷地内にゲームショップやら餃子専門店やらが同居している作りで、駐車場をシェアしあう(分け合う)作りになっていた。

出入り口などはどうしても開けておかなければならないので、スペースを有効に活用するのにはかなり良い戦略だと思う。たぶん。



「みたまえ」


会長は端末をぐいっと差し出すと、(僕に)見えるように角度を変えてきた


「今、画面に映っている子があれだな・・」


会長が画面に出てきた女の子を指差すと、タイミング悪く画像が切り替わってしまった


「ええと、焼肉屋ですね・・」


全然関係ない焼肉屋のCMが流れる。僕は気まぐれでボケを振ってみた。


「うんうん、焼肉屋だね」

「って関係ないわ!!」


意外にノってきた。会長、割とお茶目だな


「・・・」


僕は自分の端末を操作すると、高校アプリ坊主大会のホームページに飛び、今日の日程表を見た。どうやら、この試合しか行なわれて

いないらしい。


「ありました」


高校名をクリックすると、リンク先に飛んだ。紹介ページのようだ



熱来高校(ねつらいこうこう)


・吹奏楽部の強豪高として知られる高校で、約120年の歴史を持ち・・・・っと(下にスクロールして飛ばす)



束少マサラ(たばすこまさら)


・クラス3-C

・能力は、「辛いものを食べる能力」

・男のような名前であるが女性である

・~じゃんが口癖

・常に黒のタンクトップ

・ギターケースのような?リュックを背負っていて、その中に辛いものをいっぱい入れている



水無瀬 行く年来る年(みずなせゆくとしくるとし)


・クラス3-D

・束少マサラの専属アプリ坊主



「ああ、ここの能力に合わせて対戦してるのか・・」


僕は、端末の戻るボタンを押すと、戦っている対戦相手のホームページへと飛んだ



勘鷹高校(かんだかこうこう)



剛田 番子(ごうだばんこ)(女性)


・3-E

・・能力は、「不屈の精神の持ち主という能力」

・いわゆる番長。



鎌田 愛次(かまたあいじ)


・3-B

・剛田番子の専属アプリ坊主




「これはなかなか面白い試合ですね」


僕は端末を置き、会長に意見を述べた。


「だろう」


会長はふふっと笑うと、呼び出しボタンを押して店員を呼んだ。



「辛いものを食べる能力」同士で今は戦っているわけだが、もともと「不屈の精神」という特技を持っている剛田番子が、さらにハンデを貰って

有利状態なのだ。この勝負、先に根をあげたほうが負けというだけに、果たしてどうなるか・・


「ワァァァァァ!!」


カウンター席の観客から歓声が上がる。どうやら大技が決まったらしい


「ぬう、むう。」


端末の画面と、カウンター席のほうを交互に見定める会長


「これはすごいことになってまいりました!!」


端末と店の中から同時に同じ実況が聞こえる


「今回、「能力合わせ戦」ということで期待はしていたんですが・・」

「いや~、まさかここまでとは驚かされました」


実況が続ける


「今の場面・・・」

「いや、これまでの試合を振り返ってみましょう」


撒き戻し中のブロックノイズまみれの画面が2分割され、「現在の状態」と「今までのまとめ」の画面に別れる。右下の小さいほうが現在だ。



「最初は、どれだけ辛い物が好きかと言う白熱したトーク・・」

「ここは両者一歩も譲らず、意地を見せました」


「さらに注文段階の探りあい」

「最初はお互い5辛を注文しましたが、そのあとですよね」

「変えてきました」

「そして次々と、まるで相手を意識するかのように6辛、7辛と引き上げていきました」

「最後は4人全員、上限の10辛に達しました。まさに怒涛の戦い!!」


興奮した実況が一気にまくしたてる


「店員さん(次々に注文を変えられて)たまったものではないですね」


こことは違う場所に居る放送席の一人がボソっとつぶやいたが・・


「ええ!!もう、これだけ自分達の作っている物が愛されているとなれば、店員さんも(嬉しくて)たまったものでは無いでしょう!!」


どうやら実況とは少しばかり話が噛み合わなかったようだ


「そして、注文した物が出てきたときの両者(剛田と束少がアップになる)の顔!!」


実況とっても気持ちよさそうだ。


「おはようからおやすみまで、暮らしの隅々まであなたの事を考えてきた!!」

「もういますぐにでもあなたを食べてしまいたい。」

「愛しているぜ、セニョリータ!!」

「そんな感じですよね」


妄想入ってるなこの実況。熱来高校2人、勘鷹高校2人の前には、様々な具をトッピングされたカレーが配置されていた


「しかし」

「ここでポイントの減算が入りました」


辛いものを食べる「能力合わせ戦」なので、辛い物が苦手だったり、食べれなかったりすると、ポイントが減算されてしまう。勘鷹高校(かんだかこうこう)の

鎌田 愛次(かまたあいじ)選手がどうやら苦笑いを浮かべてしまったようだ。


「そこですかさず、フォローに出たのが、鎌田の相棒、能力者の 剛田番子(ごうだばんこ)!!」


実況がまくし立てると・・


「今の場面ですね。」

「ためらいが無いんですよ。」


放送席の解説者が静かに説明する



画面を見ると、剛田番子は、トッピング用の「辛さ10倍増し粉」のフタを開け、中身をすべてカレーの上にぶちまけていた。その瞬間が、ついさきほどの観客の

声援だったのだ。


「うぇ~~・・」


あんまりにも辛々しくて声に出てしまった。正面に座っている会長が、「くすくす」と笑う


「あ・・」


ふと見ると、カレー屋の店員が会長の席の後方に待機していた。気を遣って声を掛けて来なかったらしい。


「すみません・・」


僕が声を掛けると


「ああ、うん、すまんね・・」


会長も背後を振り返り、慌てて店員に謝罪した


「いえいえ、私も夢中になってましたから・・」

「ご注文のほうはお決まりでしょうか?」


大学生くらいだろうか?笑顔の似合う、かわいい店員だ。


「ああ・・では・・」

「これと、このトッピングを頼む・・」


会長がメニューを見ながら店員に注文すると


「では私はこれで・・」


僕の隣の黒服も、気を窺ってタイミングよく注文した


「珍海君はどうするかね?」


会長が尋ねてきた。いあ、だからお腹すいてないんだってば・・


「じゃ、じゃあ、僕はこれで・・」


これぐらいなら食べれるだろう、と思いポテトサラダを注文する

































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