第17話海岸の攻防(犬馬と珍海)

「それで、考えって?」

「まさか・・・」


海岸に到着した犬馬が「まゆげ」の首輪からリードを外し砂浜に解き放つと、先ほどの続きを珍海に尋ねる。少し不安そうだ


「まさかってなんだよ」

「いいから話してみ」


珍海が2人分の荷物を足元に置き、笑いながら逆に問い返した


「・・・」

「あの、私を置いて、「一騎打ち」に行くんじゃないかって・・」


顔を赤らめ、少し涙ぐんだ様子で珍海の胸の中に顔をうずめる犬馬


「あ、いや、ごめん」

「そうじゃないんだ」

「むしろ、その逆だよ」


珍海は犬馬の頭を撫でると、両肩を掴んで少し引き話した。そして一呼吸置いてからゆっくりと話し始めた


「朝、対戦相手の流布と二時之次をリサーチしたんだけど・・」

「・・ああ、朝でもなかった、まぁ、いいや」


昼近くに起きたことを思い出して苦笑いを浮かべる珍海


「それでね、今までのデータを見る限り・・」


そこまで言ってから衣服の中から端末を取り出し、操作する


「どうやら今までは二時之次が次々と一騎打ちして、地区大会(ここに来るまでの間の試合)を勝ち上がって来たみたいなんだ」

「つまり、二時之次に頼りっぱなしという訳。」


珍海が表示した画面には、跳流田高校の試合データや個人記録がずらっと並んでいた。


「ふーん?それで??」


再び珍海の体に密着した犬馬が、顔だけ端末のほうを向けて疑問を投げかける


「あえて接近してさ、警戒させて時間稼ぎをしたんだよ」


珍海は自分が一騎打ちで二時之次に勝てないことは百も承知だった。だが、相手から見ればそれは違う。

いかに一騎打ちの達人だろうと、背後から急に攻撃されては勝てないのだ。しかしルール上、二時之次が変身しなければ

珍海から攻撃される事も無い。

つまり二時之次に「先に変身させない為」に背後から尾行した、という事である。


「ちょっとまだ溜まってないみたいで・・」


珍海は照れながら犬馬の顔の前で股間の方向を指差した。


「あー・・」


犬馬は指指した方向を見て、珍海のオーラが枯れ尽くしてしまった事に気づいたようだ。


「昨日は、激戦だったもんね・・」


そう言って珍海の胸に三度、顔をうずめた。




「ハフハフハフ!!!」


辺りをぐるっと散歩して周っていたまゆげが、犬馬の足元に寄って来る


「座ろうぜ・・」


珍海はかばんの中から、着替えのシャツを取り出すと犬馬のすぐ後ろの足元に敷き、自らは砂浜に腰を降ろした


「いいの・・・?」

「砂まみれになっちゃうよ・・?」


そう言いながら少し考えた犬馬は、珍海が置いたシャツの左半分にだけ座った為、お尻の左半分が少し砂浜にはみ出てしまっている


「ここ空いてるんだけどな?」


頬を染めて珍海に問う犬馬。右手で右半分の「空き地」をぽんぽんと叩く


「御指名ですかい」


珍海は優しい表情で、もそもそと「空き地」へと移動した







































  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る